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増税、二番煎じ…岸田首相が唱える「異次元の少子化対策」は不安だらけ

ビジネス

どんな取り組みをするのか?

 岸田首相が言及したように2022年の出生数は80万人を割り込んでいます。もはや少子化対策は待ったなしの状況にあり、本来ならこども家庭庁の発足を悠長に待っている時間はありません。できることは、すぐにやらなければならない状況です。

 例えば、政府は2023年4月から出産一時金を42万円から50万円へと引き上げることを決めました。予算の都合もあるのでしょうが、もっとタイミングを早めて2023年1月から開始することも可能だったはずです。

 実際、菅義偉首相は内閣が発足した際の所信表明で不妊治療の保険適用に言及し、不妊治療の保険適用は2022年4月から始まりました。菅内閣が発足したのは2020年9月ですが、保険適用のスキームを決めるまでには時間がかかる。その間も出産適齢期の女性たちは不妊治療を続けなければならない。待ったなしだから、保険適用のスキームが決まるまでの間は不妊治療費助成の増額で対処するとし、2021年1月から不妊治療費助成額は増額されています。

やる気がないと言われても仕方がない遅さ

小池

小池百合子都知事は、都内在住の0歳から18歳までの子供一人に対して2023年4月から月5000円を支給することを表明。東京都独自の少子化対策として注目された(写真:小川裕夫)

 そうしたことからも、岸田首相が宣言した異次元の少子化対策はやる気がないと言われても仕方がない遅さです。もっと言えば、出産一時金の増額は2022年の出産分に遡って適用もできるはずです。すでに出産を終えた人に対して、出産一時金を増額しても意味がないのでは?と思うかもしれません。

 しかし、東京都における出産費用は50万円を超えています(公立病院に限る。厚生労働省「出産費用の実態把握に関する調査研究(令和3年度)」)。42万円では出産時に不足してしまうのです。さかのぼって増額した出産一時金を支給することで、「あと1人、子どもを産みたい」という気持ちを抱いてもらうことができれば、出生率の改善につながります。

 また、岸田首相は子育て支援策として2023年1月以降に出産した世帯に対して、妊娠・出産に関する用品や産前産後ケアに活用できる10万円分のクーポンを配布することも表明(自治体の判断で現金給付も可)。

 これは東京都が2021年4月より独自に取り組んでいる「出産応援事業 赤ちゃんファースト」の全国版といえるものです。岸田内閣が打ち出した10万円クーポンは東京都の二番煎じなので、支援の遅さが際立ちました

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