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増税、二番煎じ…岸田首相が唱える「異次元の少子化対策」は不安だらけ

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足立区が始めた「返済不要の奨学金制度」

 実際、文部科学省は2022年の有識者会議で、返済不要とされる給付型奨学金の拡充を打ち出しました。実は、すでに返済不要の奨学金制度を決めた自治体があります。東京都足立区です

 これまでにも足立区は、独自に貸与型奨学金制度を導入していました。しかし、貸与型奨学金を利用する学生は年を追うごとに減少していきます。その背景には、先述したように大学を卒業しても返済できる見込みが薄いことがあります。返せるメドが立たないから、最初から借りない、というわけです

 そうした事情を勘案し、足立区は2023年1月に給付型奨学金を創設。貸与型から返済不要の給付型へと切り替えました。同制度は始まったばかりですが、年間40人に奨学金を支給することを目標にしています。

 この奨学金を受け取った学生が、大学を卒業するのは4年後です。その後に就職、もしくは大学院進学するわけですが、いずれにしても給付型奨学金が創設されたからといって少子化がすぐに改善に向かうわけではありません。

私立大学から公立大学に鞍替えするパターンも

奨学金

 それでも大学卒業後に約1000万円の返済金を背負わされることがなくなります。そうした経済的負担が軽減されることで、就職後してから数年後に家庭を持とうと考える若者が増える効果は期待できそうです。足立区とは違った形で、進学時の経済的負担を軽減する取り組みをしている自治体もあります。

 近年、地方都市では私立大学を公立大学へと切り替える事例が増えているのです。当初、私立大学を公立大学へと切り替える政策は過疎化対策が主眼にありました。18歳の高校卒業時に、進学を選択した若者たちの多くは県外へ転出します。大学が多く立地する東京・大阪・名古屋などに若者が流出してしまうのです。 

 大学を卒業した後に戻ってきてくれるなら、自治体側は4年間辛抱すればいいだけです。とはいえ、いったん進学で地元を離れると、そのまま進学先の都市で就職してしまうケースが多いわけです。なんとか地元にとどまってもらい、地元で就職してもらう……そんな思いから私立大学を公立化していったのです。

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