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増税、二番煎じ…岸田首相が唱える「異次元の少子化対策」は不安だらけ

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出産を控える家庭の経済事情を理解していない

子供・子育て

 また、出産を控える家庭の経済事情をまるで理解していないことも浮き彫りになりました。なぜなら、妊娠・出産に関する用品は出産前に買い揃えておくからです。つまり、出産前に出費が重なるわけです。出産前にクーポンを配布しなければ、経済的な負担は軽減されません。経済的な負担が軽減されなければ、出生数を増やすための政策としては意味がありません

 福岡県福岡市は、2022年12月に出産した人に対して一律10万円を支給する「出産・子育て応援交付金制度」をスタートさせています。しかも、制度開始前に出産した人でも、2022年中の出産ならさかのぼって交付金が支給されることになっています。

 そして、福岡市の交付金は妊娠時に5万円、出産時に5万円といった具合に段階的に支給するので、交付金を使って妊娠・出産に関する用品を出産前に買い揃えておくことができます。こうした交付金で出産をサポートすることは重要な政策ですが、スキームがまずければ、その効果は限定的になってしまうのです。

 岸田首相が言及した2022年に年間出生数が80万人を割り込んだ理由のひとつに、2020年からつづく新型コロナウイルスの影響があります。コロナ禍は長期間にわたって日本社会全体を閉塞感で覆いました。

若者が経済的に困窮していれば…

 もちろん、コロナだけが少子化の原因ではありません。コロナ以前から日本経済の停滞は深刻で、先の参院選でも多くの候補者が「日本は30年にわたって賃金が増えていない」ことを問題視していました。

 30年間も賃金が増えない一方で、物価は確実に上がっています。実質的に可処分所得は減り、生活から余裕を奪うのです。特に自分の生活で精一杯という若者が増えていることは深刻な問題と受け止めなければなりません。

 大学進学のために1000万円近い奨学金を借り、卒業後にそれを返済していく。経済が右肩上がりを続けてきた時代なら、そうした奨学金を返済することも可能でした。けれども、近年は非正規採用が増え、正規雇用は大学新卒でも狭き門となっています。

 自己責任と片付けることは簡単なものの、若者が経済的に困窮していれば、当然ながら結婚を考えることはできません。結婚しても、子供をもうけようという気にはなれないでしょう。若年層を経済的困窮から救うことは、少子化対策にもつながるのです

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