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「食べログ」、絶対王者の地位が揺らぐか。“異例の判決”とステマ問題

ビジネス

 焼き肉チェーン「KollaBo」を運営する株式会社韓流村が、「食べログ」の不当なアルゴリズム変更によって点数を下げられ、被害を受けたとして6億3900万円の損害賠償を求めた裁判で、東京地裁は運営する株式会社カカクコムに6月16日に3840万円の賠償を命じる異例の判決を出しました。

食べログ

Tabelog website on the display of PC, url – Tabelog.com. © Sharaf Maksumov | Dreamstime.com

 点数のアルゴリズムを一方的に変更することは、独占禁止法に違反すると指摘したのです。集客手段を食べログに依存する飲食店と、収益のすべてを飲食店に頼る食べログ。この微妙な関係は以前から2つの問題を含んでいました。

 1つは食べログが優越的な立場を利用して点数を操作し、飲食店との契約に結びつけていたのではないかと疑われていた点。もう1つは飲食店がレビュアーなどに仕事を依頼し、高評価の口コミを投稿させるステマ疑惑が絶えない点です。この記事では、両者の依存関係がはらむ問題点を軸に「食べログ」のビジネスモデルを紐解きます。

飲食店選びにおける絶対的王者

食べログ

有料サービス契約店舗数※決算説明資料より

 食べログは、2022年3月末時点で6万4200店舗と有料契約をしています。Go To Eatキャンペーンを実施した2020年10月からWeb予約プランの提供を開始。それにより、契約店舗数は増加に転じました。一方、競合のぐるなびが2022年3月末時点で有料契約している飲食店数は6万614店舗。総契約店舗数では食べログが上回っています。

 調査会社のヴァリューズは、消費者の飲食店の探し方に関するアンケート調査を2021年7月に行っています。その結果によると、「情報収集媒体」で圧倒的1位を獲得しているのが食べログ。1人での食事、友人との食事、恋人との食事、家族との食事のすべての利用シーンで1位でした。

 飲食店と消費者にとってなくてはならないメディアのひとつといえるでしょう。

食べログの費用対効果は15倍?

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売上比較※決算短信と決算説明資料より筆者作成

 食べログの集客効果、費用対効果がどれほどなのか試算してみましょう。運営するカカクコムは2022年1-3月のWeb予約人数が711万人、1回の予約で来店する平均人数は2.63人だったと公表しています(2022年3月期決算説明資料より)。そうすると、3か月で約270万件、1か月で約90万件の予約が入ることになります。

 契約店舗数は6万4200店舗なので、単純計算で、1店舗あたり1か月に14件のWeb予約が入る計算です。例えば1人あたりの単価が3000円だとして、2.63人が来店すると、食べログ経由で得られる1店舗あたりの売上高は18万4000円。食べログのWeb予約の従量課金額はディナーで1人あたり200円。14組、2.63人にかかる費用は7383円です。費用対効果を単純計算すると15倍。決して悪い数字ではありません

 仮に食べログの最低契約金額であるライトプラン1万円の広告費を払ったとしても、広告費とWeb予約の従量課金で算出する費用対効果は6倍を超えます。集客効果があり、費用対効果が悪いメディアではないという点は、飲食店の食べログ依存が高まる要因のひとつです

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