藤原竜也はクズな役がなぜハマるのか?映画『鳩の撃退法』でもわかる、その理由
完全な悪人ではないからこそ生きるキャスティング
そのような、「観る側を惑わす」内容である映画『鳩の撃退法』の主人公であり語り部が、前述したようなクズな役を多く演じてきた藤原竜也というのは間違いなくベストなキャスティングであり、実際に持てるポテンシャルを全て発揮していた。
劇中の彼は、女性とすぐに性的な関係になったり、はたまたは暴力を振るわれて開き直った態度を取ったりと、「ややクズ」なところがあるキャラクターなのだが、それでいて「譲れない矜持」もあるようで、関わった誰かに親身に接することもある、完全な悪人ではないというところがミソだ。
この藤原竜也が「クズだけど、決して悪人というわけではないような……?」という印象は、そのまま彼が語る物語そのものが「本当にあった出来事なのか、それともフィクションの小説の内容なのか」と疑心暗鬼になることにもリンクしている。藤原竜也が今までにクズな役を演じていたことも手伝って、「信頼できない語り手」であることに、これ以上はないほどの説得力を持たせている、というわけだ。
とにかくめちゃくちゃ面白いと薦めたくなる
観終わった後では藤原竜也以外のキャスティングは考えられないし、他のどれだけ上手い俳優が同じ役を演じていたとしても、作品の印象は大きく変わっていただろう。
「藤原竜也のクズな役がなぜハマるのか?」という疑問の答えはやはり、やはり藤原竜也というその人がもともと持っている人間としての魅力があり、劇中でどれだけクズだったり悪どいことをしても「ずっと気になる、観ていられる」熱演をしているからだろう。
それは今回の『鳩の撃退法』では、どれだけつかみどころのない内容でも、「この人の話なら聞いてしまう」と前のめりに物語に入れ込む最大の理由にもなっていた。
その藤原竜也の魅力に限らず、映画『鳩の撃退法』は「とにかくめちゃくちゃ面白いです!」とシンプルにおすすめしたい一本だ。ぜひ劇場で、先がグイグイと気になる傑作ミステリーを、味わい尽くすように楽しんでほしい。
<TEXT/映画ライター ヒナタカ>