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大戸屋買収のコロワイドが「前代未聞の赤字」に。危険水域を乗り越えられるのか

ビジネス

自己資本比率が危険水域に

 コロワイドが競合各社と比べてどれ程のっぴきならない状況に追い込まれたか、見てみましょう。比較する指標は手元流動性比率と自己資本比率です。

 手元流動性比率とは短期的な支払い能力を測るものです。会社が保有する現金や預金などの手元流動性を月商で割ったものです。自己資本比率は長期的な会社の安全性を測るもので、総資産を純資産で割って算出します。自己資本比率は20%で安全性が高いといえ、15%を切るとやや危険度が高いとみなされます。

大戸屋

※決算短信より筆者作成

 コロワイドは同じ非日常食のワタミ、鳥貴族と比較して最低の数字となっています。

 特に目立つのが手元流動性比率の低さです。これは手持ちの現金が少なくなっていることを如実に表しています。自己資本比率も減少しており、危険水域といえる10%を切る水準まで落ち込んでいます

 コロワイドは銀行からの借り入れではなく、自己資本に厚みをつけるための資金調達手段が必須となります。

債務超過に転落した大戸屋を優先株で救済

 そんなさなか、大戸屋は2021年3月期第3四半期で50億1700万円の純損失を計上。18億6300万円の債務超過に転落してしまいます。コロナが一瞬にして大戸屋の自己資本を吹き飛ばしてしまったのです。客数が激減した上、不採算店舗の減損損失17億円を計上したことが大打撃となりました。

 親会社となったコロワイドは、もちろんそれを見過ごすわけにはいきません。大戸屋の優先株30株を引き受けて30億円の資金援助をしました。

 まさに泣きっ面に蜂。コロワイドは本体の資金繰りが厳しいにも関わらず、買収したばかりの子会社も助けなければならなかったのです。アトム株を売却して148億6700万円を調達した背景にはこうした懐事情が潜んでいました。

 コロワイドはアトムの株式を50%超保有する大株主ですが、今回の大量売却によって、保有比率は過半数を下回って41%程度となる見込みです。支配力を失っているのです。

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