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大戸屋買収のコロワイドが「前代未聞の赤字」に。危険水域を乗り越えられるのか

ビジネス

 2020年9月8日、大戸屋ホールディングスに敵対的TOBをしかけたコロワイドが勝利宣言をしました。株式の保有比率が目標としていた40%を超えて46.77%に達したのです。国内の外食企業で初めて敵対的TOBが成立した歴史的な瞬間といえます。

大戸屋

大戸屋 新宿東口中央通り店

 TOBは成立したものの、買収には70億円以上が投じられており、コロワイド本体も緊急事態宣言で客数が減少しています。資金繰りに窮しているのです。3月には子会社で「ステーキ宮」などを運営するアトムの株式を2300万株売却して、148億6700万円を調達すると発表しました。

 大戸屋の買収で一躍世間の脚光を浴び、キレッキレの印象を残したコロワイドですが、順風満帆のスタートとはいかないようです。

大戸屋は「ちょうどいい」サイズだった

 コロワイドは焼肉「牛角」や居酒屋「甘太郎」、回転ずしの「かっぱ寿司」などを運営している会社です。

 非日常食を得意としていますが、新型コロナウイルスの感染拡大で宴会需要が消滅。居酒屋などの在り方そのものが問われるなか、コロワイドが大戸屋という日常使いの食堂を買収した意味は大きいです

 コロワイドはハンバーガーショップ「フレッシュネスバーガー」も2016年12月に買収していますが、売上はその年の12月1日から翌3月31日までで12億円ほど。グループ全体で2000億円超の売上規模を誇るコロワイドには事業として小さすぎます。売上250億円の大戸屋は規模が大きいうえ、買収するのにちょうどいいサイズでした。

 大戸屋は創業当時から店内調理にこだわり、それを守りぬいてきました。しかしコロワイドは「令和の時代にまだ店内調理? マジで言ってるの」といわんばかりに店舗オペレーションを批判。

 セントラルキッチン化で人件費をカットし、営業利益率が上げられるとしたのです。大戸屋側は「でも、店内調理がお客さんから支持されている理由なんだから」と反論。両社の応酬から目が離せない展開となりました。

 コロワイド体制となったことで、今後、大戸屋の営業利益率がどれだけ変わるのか。客数は大きく変化するのか。この2つは見逃せない要素です。

全体未聞の売上高30%減

フレッシュネスバーガー

フレッシュネスバーガー晴海トリトンスクエア店 © Wothan777se

 ここまでがコロワイドが買収した目的とこれまでの流れです。一連の出来事はコロナ下で行われていました。華々しい働きっぷりとは裏腹に、コロワイドの業績は他の外食企業同様、悲惨なものとなっています。

 2021年3月期第3四半期の売上高は前期比30.4%減の1251億2900万円となりました。過去の業績を振り返っても30%減は前代未聞。純損失は70億2100万円にものぼりました

 しかし、コロワイドの苦境は一過性の業績だけで語ることはできません。現金の保有比率、自己資本比率を見るとそのヤバさがよりリアルに迫ってきます。

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