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サントリー天然水「1本買えばもう1本」キャンペーンはなぜ誕生したのか

ビジネス

“水分摂取の啓発”というテーマ

サントリー

――社員からも物議が。それで、どういう目的だったんですか?

米谷:今年の夏は、そもそも“水分摂取の啓発”というテーマで、日本人は、平均して、コップ2杯分の水の摂取量が足りないよという活動をしていたんです。5月頃、生活様式が変わって、家の中にいるようになったときに、水分も家の中で摂るようになりました。外に出ないので、550ml(ペットボトル)の売上は減りましたが、2Lの需要は増えました。求められる容器の大きさも変わったんです。

――確かに、各地のお店で、2Lペットボトルの棚が空っぽになっていました。

米谷:そこで、弊社としても、2Lが求められているなら、より届くように提供する形を変えたほうがいいのではないかと考えていたとき、室内での熱中症に警鐘が鳴らされたり、またコンビニさんにも来店が減っていたという事情がありました。550mlで、大きなおまけがもらえるというキャンペーンはコンビニで水を買ってもらう良いきっかけにもなる。お互いハッピーな企画だったんです。

――とはいえ、普通は2Lに550mlをつけよう、と考えそうですが……。

米谷:社内でも、その点は議論が分かれました。ただ、水がもらえるというのは、ある意味“驚き”がないことです。水は新しい何かではない、定番のものなので。それでも水を欲しいと思ってもらうには、これくらいのインパクトを仕掛けたいという熱量が大きかった。事後のニーズにつながるのか、賭けでもあると思っていました。

気になるキャンペーンの結果は?

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おまけの2L分のレジ袋はタダだったことも話題になった

――1本おまけにしても、ちゃんと儲けは出るってことですよね。そして、キャンペーンの結果、売上や効果はどうだったのでしょうか。

米谷:利益については、そのあとの購買につながればいいということで、広いレンジでみたら、キャンペーンは意味のあることだなと思っています。

 小容量のミネラルウォーター(550mlなどの容量帯)は都市部で消費される構成が高く、デスクワークの人が買われるので、実は一時は他の飲料よりも落ち込みが大きかったんですね。ただ、7月以降は回復して、天然水ブランドは伸長を続けています。またキャンペーンが終わったあとも歩留まりは高くて、気づきを得られた人が多くいらっしゃったと考えています。

――“気づき”とは?

米谷:2Lが家にあるならということで、ご飯を炊いてみたりお酒を割ってみたり、それまでミネラルウォーターをそういうふうに使ったことがなかった人が、生活のなかに取り入れてくださって、美味しいと気づいていただけたのかなと。また、夏の台風時期ということもあり、防災備蓄という観点からも関心度は高かったようです。大きなペットボトルの水が家にあるのは安心だよねという実感も生まれたかなと思います。

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