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なぜパスワードは破られるのか?天才脱獄犯が示唆する「ハッカーの心理」

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注意する看守を逆に脅す佐久間

刑務所

 白鳥由栄についてはテレビ番組で取り上げられることも多く、そこでは白鳥の驚くべき身体能力や脱獄の手口に対して注目が集まる。しかし、『破獄』はそうした番組とは一線を画している。

 脱獄の手口そのものについてはあまり解説しないのである。むしろ『破獄』においては、脱獄王・佐久間と看守とのやり取りにスポットライトが当たっている。

 たとえば佐久間には寝るときに布団を頭までかぶるという癖がある。これが本当に癖なのか、はたまた脱獄のための準備なのかは明らかではない。いずれにせよ、看守は怒鳴り散らしてこの癖をやめさせようとする。

 すると佐久間が「いいんですか? そんなにいやがらせするならあなたが担当のときに脱獄しますよ」と脅すのだ。看守はもし自分の担当日に脱獄者がでると処分されてしまう。懲戒免職もありうる厳しい処分だ。

セキュリティにおける「人間」という脆弱性

 しかも佐久間には脱獄の実績があるし、手錠を簡単に外してみるなど、その実力を看守に見せつけてもいる。そのため看守たちは自分が責任を取らされることを恐れて段々と佐久間に対して甘くなっていく。

 こうして警備が緩くなってきたときに佐久間は脱獄を成し遂げる。

 結局のところ、どんなに堅牢な監獄も、人によって管理され、人が関与するところに脆弱性があるのである。仮に、鉄板で前後上下左右を囲った箱に佐久間を閉じ込め、すべての辺を溶接してしまえば佐久間はおそらく逃げられない。

 しかし実際には、空気の入れ替えも必要だし、食事も提供しないといけない。こうした管理のために看守をはじめとして出入りが自由な人間も監獄には存在する。そのため元から完璧に脱獄が不可能な設計にはできないのである。

 このことはサイバーセキュリティにおいても同様である。ITであれ実物であれ、世の中の「システム」は必ず利用者と管理者が設定されている。そして、どんなに堅牢なシステムも、それらを装うことでハッキングが可能になっている。

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