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なぜパスワードは破られるのか?天才脱獄犯が示唆する「ハッカーの心理」

暮らし

 文学なんて時間の無駄、文学なんて読んでも儲からない、そんな時間があるならビジネス書を読む……。そんな感覚を持つビジネスパーソンは多いかもしれない。しかしそのような考えは、経営戦略の基本から考えても大きな間違いである。

本

※画像はイメージです(以下同じ)

 多くの「デキる」ビジネスパーソンは経済紙、ビジネス雑誌、ビジネス書、ときに経営学書・経済学書・技術書などを読む。ライバルに後れをとらないためにもそうした読書は必要である。

 しかし、他のビジネスパーソンと「差」をつけるには、他者と同じ情報を得ていてはダメである。経営戦略論の大家ポーターも指摘するように「Strategy is being different」だ。ビジネスパーソンがあまり読んでいないからこそ、いま文学を読むことは他者と違った価値(=差別化)につながる。

 ただしそこには「読み方」がある。そこでこの「文学で“読む”経済」では、文学から社会と経済を読みとり、ビジネスに活かすという体験を、読者と共有することを目指す。

吉村昭『破獄』とハッキング

脱獄

※画像はイメージです(以下同じ)

 日本には脱獄王と呼ばれる人物がいる。風呂桶から合いかぎを作る、布団に掃除用具を詰めて寝ているようにみせかける、みそ汁を毎日かけて監獄の扉の留め具を腐らせるなど、『アルカトラズからの脱出』や『ショーシャンクの空に』も顔負けの手法で、4度も脱獄を成し遂げた人物が実在するのである。

 その名は白鳥由栄。吉村昭『破獄』の中では「佐久間清太郎」として描かれている。『破獄』の中での佐久間は、護送の途中で手錠を外したり、鎖を一瞬で引きちぎったりなどをいとも簡単にやってのける超人である。

 この『破獄』、もちろん物語としても面白いのだが、同時に現代のシステム管理やセキュリティ管理に対しても示唆がある作品となっている。監獄をある種のセキュリティシステム、脱獄を一種のハッキングと読み替えることで、こうした示唆が引き出せる。

「なぜセキュリティは必ず破られるのか?」「破られづらいセキュリティシステムを構築するにはどうすればいいのか?」という疑問に答える素材を提供してくれているからだ。

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