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73年前の小説「ペスト」が新型コロナで大売れ。現在の社会情勢とそっくり

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 文学なんて時間の無駄、文学なんて読んでも儲からない、時間があるならビジネス書を読む……。そんな感覚を持つビジネスパーソンは多いかもしれない。しかしそのような考えは、経営戦略の基本から考えても大きな間違いである。

読書

※画像はイメージです(以下同じ)

 多くの「デキる」ビジネスパーソンは経済紙、ビジネス雑誌、ビジネス書、ときに経営学書・経済学書・技術書などを読む。ライバルに後れをとらないためにもそうした読書は必要である。

 しかし、他のビジネスパーソンと「差」をつけるには、他者と同じ情報を得ていてはダメである。経営戦略論の大家マイケル・ポーターも指摘するように「Strategy is being different」だ。ビジネスパーソンがあまり読んでいないからこそ、いま文学を読むことは他者と違った価値(=差別化)につながる。

 ただしそこには「読み方」がある。そこでこの「文学で“読む”経済」では、文学から社会と経済を読みとり、ビジネスに活かすという体験を、読者と共有することを目指す。

新型コロナウイルスと『ペスト』

 市が閉鎖され、アルコールが消毒に良いらしいと人が殺到し、「~ごろににはこの状態も収まる」という予想の数々が出回る……。現代のレポートではない、1947年に出版された小説である。

 アルベール・カミュは『異邦人』などの作品で知られているが、この『ペスト』もまた彼の代表作のひとつである。新型コロナの流行とともに『ペスト』への注目が集まり、最近では平積みにしている書店も多いという。文庫を発行する新潮社も3月に1万部以上の増刷を決めた。実は、このコラムの執筆中にも毎日新聞で『ペスト』についての記事が出てしまって筆者は少し焦っているくらいだ。

 いつの時代も人間や社会は変わらない。ノーベル賞経済学者のハーバート・A・サイモンが『経営行動』の序文で書いているように、医学やコンピュータ科学といった技術的知見はあっという間に新しいものに取って代わられるが、人間社会に対する知識はそう簡単には古くならない。そして、人と社会について考え抜いた文学は、ときに人間社会への深い理解を与えてくれる。

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