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民泊で一人勝ち「Airbnb」は新法でどうなる?物件激減、新たなライバルも…

暮らし

エアビーの一人勝ちだが、新たなライバルも?

 ゲスト向けには、楽天ライフルステイが「Vacation STAY」、百戦錬磨が「STAY JAPAN」の民泊仲介サービスを立ち上げてAirbnbに勝負を挑みます。

 が、こちらもユーザー数はAirbnbとはまだまだ離れているようです。楽天ライフルステイが提携した米「HomeAway」の利用が6月に伸びた程度で、いまのところ市場に大きな変化はありません。楽天ライフルステイはほかに「Booking.com」、台湾「AsiaYo!」、中国「途家」などと提携し海外チャネル拡充を図るものの、日本でのブランド浸透には苦戦の様子です。

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図表 7:民泊仲介事業者サイトの月間ユーザー数推移

新規参入の民泊仲介ライバルにはまだ差がついている

 ホスト激減でもライバル各社との差を維持できるのは、ユーザーの民泊利活用をグローバルに押さえるAirbnbの強みといえます。

 Airbnb利用の前後30分間に利用されている上位サイトからは、ユーザーのAirbnbに対するロイヤリティが感じられます。Airbnb閲覧前に利用された旅行サイトは8位のBooking.comのみ。エアビー閲覧後にはBooking.comや楽天トラベル、トリップアドバイザーといった旅行サイトが見られていますが、まずはAirbnb確認後という行動です。

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図表8:エアビー利用の前後に利用したサイト

「Vacation STAY」や「STAY JAPAN」はまだeMark+で取れているログが少ないので、定量的にユーザー行動を確認できませんが、既存市場に食い込むのか、新たな市場を開拓するのか..?

Airbnbに求める価値

 年代・世帯収入別に、Airbnbについて検索したユーザーの掛け合わせ検索ワードを確認します。

 エリア関連キーワードだと「TOKYO」「ハワイ」「JAPAN」「京都」などの検索者は比較的高年収。特に「京都」は50代以上に人気で、旅館やホテルで得られない京町家などでの体験を求めているのかもしれません。「東京」だともうちょっと年収ゾーンが下がります。他方「沖縄」検索者は世帯年収が比較的低めで、同じAirbnbユーザーでも「ハワイ」検索者とは属性が異なるようです。

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図表9:「エアビー」「エアビーアンドビー」「Airbnb」と併用されている検索ワード(2016年10月-2018年9月)

 ホストを検討していそうな「民泊」「代行」「ホスト」といった検索ワードは意外に世帯年収500万-650万円の中間層が多く、30-40代が中心。「Airbnbとは」と包括的に情報収集していそうな検索者は50代、年収800万円前後でした。「手数料」「クーポン」は30代なのに世帯年収900万円前後のセレブが気にしています。

SNSとGoogleを多用、シェア志向なユーザー像

 一般ユーザーに比べAirbnbユーザーの利用率が特に高いサイトは、SNSが上位に。特にFacebookは44%、YouTubeは34%、Twitterは32%、インスタは30%も一般ユーザーより利用が多く、人とのつながりを大切にする傾向です。旅行やホスト体験の閲覧・シェアはもちろん、ホストとゲストの交流も含まれるのでしょう。

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図表10:一般ネットユーザーと比べエアビーユーザーの利用率が高いサイト(利用率差の順)

 SNS以外のサイトは、WikipediaやYahoo! 知恵袋も一般ユーザーより利用が多いのが特徴で、調べ物を厭わない傾向です。ITコスト抑制やコラボレーションに便利なGoogleの各種サービスの多用も、シェアエコノミーを受け入れやすいユーザー像を想起させます。

 新法で一度リセットがかかりスピードは鈍化するものの、2020年の東京オリンピック・パラリンピックを控えた日本の民泊市場にはまだまだ成長の余地があります。訪日外国人客だけでなく、国内日本人同士の利用も未開拓市場といっていいでしょう。

 Airbnbにせよ新プレイヤー楽天ライフルステイや百戦錬磨にせよ、日本が誇るおもてなしの心を、世界とそして日本の各地で、紡ぎ深めるプラットフォームであって欲しいものです。

<TEXT/清水響子>

【調査・分析データについて】
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法政大学院イノベーション・マネジメント専攻MBA、WACA上級ウェブ解析士。CRMソフトのマーケティングや公共機関向けコンサルタント等を経て、現在は「データ流通市場の歩き方」やオープンデータ関連の活動を通じデータ流通の基盤整備、活性化を目指している

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