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三菱・三井・住友「財閥系不動産」“最高益更新”と“減収”で分かれた明暗

ビジネス

オフィス需要は堅調だが…

 コロナ禍となる2021/3期は大幅な減収となりました。不動産賃貸事業では影響を受けやすいホテル、イベントホールなども手がけていましたが、メインのオフィス関連の需要が堅調であり、セグメント全体では増収増益となっています。一方で、不動産販売事業は前年に引き続き戸数が減少しており、売上は大幅に落ち込みました。ただし利益率は改善しており、営業利益は増益です

 完成工事事業は消費増税が起きた前期の受注減少の影響を受けて戸数が減少し、減収減益となりました。営業自粛による影響もあったようです。全社業績は分譲マンション販売、住宅工事の減少が減収要因となった形ですが、コロナ禍よりも市場の動きや増税が主な要因のようです。

 翌2022/3期は新規オフィスの稼働やホテルの回復もあり、不動産賃貸事業が好調となりました。一方で不動産販売事業は前年に引き続き販売戸数が減少したことで売り上げが落ち込みました。ただし、利益率は改善しています。完成工事事業は営業活動の回復もあり、前年よりは受注が伸びたようです。

 近年の業績を見ると堅調なオフィス需要に支えられた不動産賃貸事業は伸びているものの、分譲マンションの販売数減少が全社業績に大きく影響しており、全社では2020/3期に売上高過去最高を記録して以降、更新できていません。2023/3期は売上高9500億円と増収を見込んでいますが、依然控えめなようです。

それぞれの戦略は?

株価

 今後の各社の動きについて見ていきましょう。業界トップの三井不動産はオフィスや商業施設など、既存事業の拡大を進めつつ、国内で培ったノウハウをもとに海外進出を進めるようです。

 三菱地所は新宿など丸の内以外への進出も強化するとしており、海外事業でもこれまでに進出してきた米英だけでなくアジア地域を強化するとしています。他事業強化により丸の内依存の体質から脱却をはかるようです。

 住友不動産はオフィス賃貸が堅調なものの、分譲マンション販売については目標未達と認めています。不動産販売に関しては大幅な規模拡大が見込めないなか、数量ではなく利益率を追及した方針に転換するようです。

 不動産市場の動きをみると都心のオフィス需要は確かに堅調ですが、タワマンなど首都圏の分譲マンションは価格上昇が続く一方で新規戸数が減少しており、規模拡大は難しい状況です。各社はオフィスビル収入を主軸としながら、他事業でいかに稼げるかがカギとなってくるでしょう

<TEXT/経済ライター 山口伸>

化学メーカーの研究開発職/ライター。本業は理系だが趣味で経済関係の本や決算書を読み漁り、副業でお金関連のライターをしている。取得した資格は簿記、ファイナンシャルプランナー

Twitter:@shin_yamaguchi_

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