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“業界一強”ABCマートに直撃、強さの秘訣と「駅近に複数出店」するワケ

ビジネス

「専売品」実現までのメーカーとの交渉

エービーシー・マート

質問に答える、エービーシー・マート竹下氏

 今やABCマートは国民的靴店チェーンとしての地位を確立しているが、そこに至るまでには苦労も多く経験したという。

 特にナイキやアディダス、プーマやニューバランスなどの有名ブランドは競合他社も納入されるスニーカーゆえ、価格競争に負けないためにも卸売価格の交渉が必要になってくる。しかも基本的にブランドの間には代理店が入っていることが多く、どうしても取引上では交渉の余地を見出しづらい状況だったのだ。

「仕入れやマージンコストを省いた価格で販売したり、ABCマートでしか取り扱えない専売品を提案したりするには、やはりブランドと直取引をする必要がありました。

 幸いにも、ABCマートの接客力や販売力、提案力はもとより、当時より著名な芸能人を起用したテレビCMで認知度が取れていたこともあり、時間はかかりましたが、各メーカーと直接交渉ができるようになりました。日本法人では意思決定できない提案については、一緒にメーカーの本国へ出向いて、商品企画を伝えることも行ったんです」

 ABCマートを支える現場のスタッフに加え、本部社員も週末は店舗スタッフとして接客販売し、顧客ニーズやトレンドを分析。そこで得られたデータをもとに、ブランドの本国の担当者へ提案する。こうした熱意によって、ABCマートでしか流通しない色や形、デザインを持った「ABCマート専売モデル」を取り扱うことが可能になった。

当社でしか販売していないので、値崩れを防ぎ、適正価格でお客様に訴求できる。これは利益率向上につながり、他社との優位性を生み出す大きな特長になっていると思います」

オンラインだけでなく、リアル店舗も重要に

エービーシー・マート

ABC-MART GRAND STAGE 渋谷店内のナイキを扱うショーケース。GRAND STAGEでしか扱わない商品も陳列されているという

 そんななか、2020年に発生したコロナパンデミックにより、リアル店舗を運営する多くの小売業やサービス業が苦難を強いられた。ABCマートもまた、実に国内半数程度の営業自粛を余儀なくされたという。

 竹下氏は「在宅勤務が増えたことでビジネスシューズの売上は落ち込んだが、靴は必需品ということもあり、巣篭もり需要で関心が高まったランニングシューズやウォーキングシューズなど、実需に合わせた購買喚起を図った」と語る。

「コロナ禍で消費志向やライフスタイルが多様化し、お客様のニーズも変化していますが、靴の購買においては『試着してから』というのが普遍的に求められています。要は、実際に試し履きして履き心地やフィット感などを確かめないと、買うか否か不安に思ってしまう側面がある。

 だからこそ、リアル店舗の対面販売が重要になってくるわけで、今後もお客様とリアルで接するチャネル拡大を目指していく予定です」

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