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机をたたいて叱るのはアウト?対策が義務化した「職場のパワハラ」の境界線

学び

 職場のハラスメントは、そこで働く人の能力やモチベーション発揮の妨げになり、個人の尊厳や人格を傷つける許されない行為です。また、そうしたハラスメントは職場の秩序を乱し、業務や生産性、企業の評判に悪影響を及ぼすことは言うまでもありません。

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※画像はイメージです(以下同じ)

 法改正があったパワーハラスメント事情について、特定社会保険労務士の澤上貴子氏に詳細を聞きました(以下、本人寄稿)。

ハラスメント対策がますます重要に

 2019年の第198回通常国会で、「女性の職業生活における活躍の推進に関する法律等の一部を改正する法律」が成立し、2020年6月、労働施策総合推進法、男女雇用機会均等法、育児・介護休業法において、職場のハラスメントに係る規定が改正され、ハラスメントについて相談したこと等を理由とする不利益取扱いの禁止、国、事業主及び労働者の責務が明確にされるなど、ハラスメント防止対策が強化されました。

 特に改正労働施策総合推進法では、職場におけるパワーハラスメント防止のため、事業主に相談体制の整備等の雇用管理上の措置を講じることを義務付けることとしました。

 大企業に対してはこの改正は2020年6月1日から施行され、中小企業は2022年3月31日までは猶予を設けられて努力義務とされていましたが、この4月から中小企業においても同様に義務化されました。ハラスメント対策はすべての企業において「待ったなし」になったということです。

職場のパワーハラスメントとは?

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 職場におけるパワーハラスメントとは、職場において行われる、①優越的な関係を背景とした言動であって、②業務上必要かつ相当な範囲を超えたものにより、③労働者の就業環境が害されるもの、であり、①~③までのすべてを満たすものを言います。パワーハラスメントは、代表的な類型として次の6つに分類されています。

【①身体的な攻撃】…… 殴打、足蹴りなど暴力をふるう。
【②精神的な攻撃】…… 人格を否定するようなひどい暴言、大声で威圧的な叱責、長時間にわたる厳しい叱責を行う。常に小馬鹿にしたような態度をとる。
【③人間関係からの切り離し】…… 無視、仲間外れにする。一人だけ会議に呼ばない、飲み会に誘わない、メール、回覧物などをまわさない、別室で作業させる等。
【④過大な要求】…… 経験や能力に見合わない難しすぎる仕事、多すぎる業務量を与え、達成できないと厳しく叱責する。業務に関係のない過酷な環境での仕事を命じる。
【⑤過小な要求】…… 経験や能力に見合わない簡単すぎる仕事をさせる、あるいは仕事を与えない。
【⑥個の侵害】…… 私的なこと(家庭、出身、信条、宗教等)に過度に立ち入る。

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