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セレブ御用達ショップ「キットソン」が復活。米国人創業者が語る、転落と再生

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 東京の原宿や新宿などにあったセレクトショップ「キットソン(KITSON)」を憶えているだろうか? 日本で「LAセレブ(エルエー・セレブ)」という造語を生み出したことでも知られる、米国ロサンゼルス(L.A.)発の服や雑貨であふれていた元祖セレブご用達ショップだ。当時、「KITSON」のロゴが大きく施されたバッグを街で見かけたことがあったかもしれない

キットソン

セレブご用達ショップやレストランが並ぶL.A.市内ロバートソン通りにある旗艦店

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 2000年3月にL.A.でオープン直後に多くのセレブが来店する店として有名になり、2009年3月には日本へ上陸も果たした。一世を風靡したが、急ぎすぎた事業拡大で失敗し、2015年12月に倒産。2016年1月にはL.A.にあった全店18店舗が閉店し、完全に事業撤退。だが、その数か月後(2016年5月)に「キットソン」はひそかに復活を遂げているのだ。

「キットソン」創業者のフレイザー・キットソン・ロスさん(Fraser Kitson Ross)は、自分のミドルネームとラストネームをもじった「KITROSS(キットロス)」という店名で、2016年5月にL.A.の「キットソン」旗艦店の跡地に新しいセレクトショップを開店。「キットロス」は、名前こそ違うが、L.A.発のポップな服や雑貨などを販売している、丸ごと「キットソン」だ。

コロナ禍で「ピンチをチャンス」に

 その後、「KITSON KITROSS(キットソン・キットロス)」へ改名し、さらに「Kitson Los Angeles(キットソン・ロサンゼルス)」へ再改名。現在、創業当時の「キットソン」が完全復活している。

 コロナ禍の2020年7月にはビバリーヒルズ(Beverly Hills)の高級ショッピング街に3号店、2021年1月には富裕層が住むビーチタウンのパシフィック・パリセーズ(Pacific Palisades)に4号店を開店し、現在、L.A.市内で4店舗を展開している。まずは多くの他店が一時閉鎖や閉店をせざるを得ないコロナ禍になぜ事業拡大を? と、ロスさんに聞いてみた。

「世界中から観光客が訪れるビバリーヒルズの高級ショッピング街に店を持つことはずっと憧れだった。コロナ禍というピンチをチャンスに変えることもできると信じて、思い切って事業拡大を始めている。(ビバリーヒルズは店舗の家賃が高額なことでも有名だが)『空き店舗にしておくより、誰かに貸したほうが得だろう』というふうに不動産オーナーへ交渉して店を構えることに成功した」

「日本のことは常に頭の中にある」

キットソン

店先にはプールに浮かべて遊ぶ玩具が賑やかに並ぶ。ちなみに、現在、L.A.でセレブによく売れているヒット商品

 同ショップでは、L.A.発ブランド中心のメンズ、ウイメンズ、キッズ、ベイビー、雑貨の商品を揃えている。扱うブランドは400社。そのうち人気のアパレルブランドは、「FREECITY(フリーシティ)」「Aviator Nation(エイビエイター・ネーション)」「Los Angeles Trading Company(ロサンゼルス・トレーディング・カンパニー)」「Jet(ジェット)」。インテリア&雑貨ブランドでは、「Jonathan Adler(ジョナサン・アドラー)」。

 2000年創業当時は、高級ジーンズをわざと無造作に床に積み上げ、手頃な値段の商品と並べるディスプレイ方法によって、客が高価な商品を気軽に買えるように工夫していたり、パパラッチとセレブを店の前で騒がせたりと、常にさまざまな戦略で成功してきた同店だが、コロナ禍の戦略は?

「今の時代は、『セレブが何を着ているか? 何を持っているか?』という情報よりも、ソーシャルメディア(SNS)の口コミを参考にしてショッピングする消費者がほとんど。特に何かを仕掛けるのではなく、個性的で特別感のある商品を求めて来店するお客さんの期待に応えられるように、ベストを尽くすに限ると思っている」

 また日本へ店を出す予定はと聞くと、「日本のことは常に頭の中にある。また店を出せたらいいなと思っている」と、嬉しい回答をしてくれた。

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