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大坂なおみの会見拒否が「自分勝手な行動」では決してない理由

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“大坂なおみ時代”という歴史的なターム

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 大坂選手はスポンサー収入も増えて、世界トップクラスのアスリートになっています。こうしたアクションが、少なくともグローバルスタンダードでは、スポンサーのプラスになるというその状況が作れている。これは、さまざまなアスリートにとって刺激となります。

 こうして社会に対する視線を持って競技に参加することこそが、自分の価値を高めてくれるものだ。そういった人を応援することこそが、企業のイメージを高めてくれるんだ。これは理想的な話をすれば、社会を良い方向にする、良い方向に動くことに対して経済的なインセンティブがつく、と。

 これによって、人々は損得勘定で考えても、いいことしたほうが得だという考えになるわけですよね。そういったある種の方向づけがなされることによって、社会全体の向きが変わってくる。そのきっかけを与えてくれたことは、“大坂なおみ時代”という歴史的なタームと評価するに値するのではないかと思います。

“大坂なおみ的なあり方”に憧れる世代が生まれてくる

 大坂選手のアクションに対しての日本社会の反応を、同時に記録として見ておくことで、日本社会のありようがどうなっているのかが非常にわかります。

 大坂選手は、日本、アメリカ、ハイチといったさまざまなルーツを持つ人であり、こういった人は今後のグローバルスタンダードでもあります。なぜならば、いまや人はグローバルに移動しているから。大坂選手はさまざまな人が混ざり合って生活していくであろう「今後の人」としてのモデルでもあると思うからです

 大坂選手のアクションによって、日本社会、そして日本人たちが“我が事”として考えるきっかけが与えられているわけですから、あとは自分たちでそれを引き取って、どういった社会にしていくのか、どういうふうに生きていくのか、考えていくといいのではないかと思います。

 大坂選手のような行動を1人の人間がやるには、あまりにもハードルが高いです。ハードなアクションをしながら、自分のやりたいテニスで成績を出し続けているという驚異的なあり方そのものが、人々に「あ〜、この人みたいになりたい」「このような生き方をしたい」という感染力を持たせる。

 そうすることで、“大坂なおみ的なあり方”に憧れる世代がどんどんと生まれてくる。そして本当の「大坂なおみ時代」ができてくるのではないか、と僕は思います。

<TEXT/ダースレイダー 構成/bizSPA!取材班 撮影/山口康仁>

1977年パリで⽣まれ、幼少期をロンドンで過ごす。東京⼤学に⼊学するも、ラップ活動に傾倒し中退。2010年6⽉に脳梗塞で倒れ合併症で左⽬を失明するも、現在は司会や執筆と様々な活動を続けている。

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