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安倍元首相の「国葬」を「お葬式」と混同する人に言いたい“重要な論点”

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 東京大学中退の経歴で、マルチに活躍するラッパー・ダースレイダー(45歳・@DARTHREIDER)の連載「時事問題に吠える!」では現代に起きている政治や社会の問題に斬り込む。

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 2022年7月8日、奈良市西大寺駅北口バスターミナル付近で起こった銃撃事件は、参議院選挙期間中の演説中の安倍晋三元総理大臣を狙ったものだった。総理大臣経験者が襲撃によって死亡したのは第二次世界大戦後初めてのことであり、世間に大きな衝撃を与えた。

 岸田文雄総理大臣から国葬を実施する方針が発表されたのは、事件から1週間も経たない7月14日のこと。政府の決断に対し、さまざまな賛否の声があがっているが、私たちはこの一件とどのように関わることができるのだろうか。前後編にわたってお送りする(以下、ダースレイダー氏の寄稿)。

民主主義的な国葬の決め方とは

 安倍元総理大臣の銃撃事件は、現時点では、背景に世界平和統一家庭連合(旧統一教会)への恨みがあったことが判明しています。ですが、それが明らかになる前は、選挙、つまり「代表民主制における主権者である民の代理人を選ぶ手続き」の最中の妨害行為ではないかという論旨で、“民主主義への挑戦”という言葉がかなり多くの政治家から語られました。

“民主主義への挑戦”という表現は、日本が民主主義を体現してるという前提がなければ、成立しません。もちろん、日本は看板としては民主主義国家を掲げていますし、制度としてはかなり高度なものを設計していると僕は思っています。選挙をするとかなり正確に、1票レベルまで票差が出ますし、その結果、選ばれた人たちが国会に登院して、その中から内閣を選ぶ代理人院内閣制もちゃんとあります。

 ですが、日本は果たして民主主義国家と言えるのでしょうか。今回の国葬問題は、そこが非常に明確に見えてくる案件でもあると思います。国葬に対して賛成も反対もある状況で、誰がどのように物事を決定するのかという点で、日本が民主主義国家なのか問われるわけです。

国葬とはそもそも何なのか?

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総理大臣官邸で安倍元総理の逝去について会見をおこなう岸田文雄首相 ※首相官邸HPより

 銃撃事件からの流れをおさらいすると、当初はメディアも“特定の宗教団体”という言い方をするなど、報道内容はわりと留保していました。ある程度の裏が取れるまで留保するという姿勢自体は別にいいと思います。一方で、岸田さんは早々に「国葬儀(国葬)」という言葉を使って安倍さんの急逝へのセレモニーを提案しました。

 ここがまず議論がいろいろとよじれるポイントなので、整理していく必要があるでしょう。まず、国葬儀とは何なのか? 日本でお葬式といえば火葬を伴うお通夜と告別式のことというのが、僕の認識です

 僕個人の話をすると、父が他界したときには、僕が長男なので喪主を務めました。父の場合は、通夜・告別式を無宗教方式でやったのですが、その後、父が所属していた会社の方や同級生や友人たちが、弔意をもって偲ぶ会やお別れ会を開催してくれました。本当にありがたいことです。

 それらの会には僕も呼ばれて出席しましたが、父のお葬式は、僕が喪主を務めたお通夜・告別式であって、その後のお別れ会のことを「お葬式をもう1回開いてもらった」とは認識していません。

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