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安倍氏銃撃から考える、政治家が宗教団体に“お墨付き”を与えることの危うさ

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 東京大学中退の経歴で、マルチに活躍するラッパー・ダースレイダー(45歳・@DARTHREIDER)の連載「時事問題に吠える!」では現代に起きている政治や社会の問題に斬り込む。

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 第26回参議院選挙の期間中である2022年7月8日、安倍晋三元首相が奈良県での自民党候補の応援演説中に銃撃され、亡くなりました前編に引き続き、国内外に大きな衝撃を与えたこの事件を通して見えた、世の中や政治と宗教の関わりについて、ダースレーダーが見解をつづる(以下、ダースレイダー氏の寄稿)。

【前編】⇒《銃撃の責任は「アベ批判派の悪口」に?権力者へのスタンスを考える》を読む

宗教団体名を伏せていた各メディア

 安倍さんは7年8か月という長期にわたって日本のリーダーだったので、事件直後から海外メディアも報じ始めました。米紙の報道では特にクアッド(日米豪印戦略対話)、自由で開かれたインド太平洋地域の実現への功績が評価されていたように思います。また日本の軍備増強を目指していた政治家である点も強調されていました。

 徐々に、犯人の動機の一端として「母親が特定の宗教団体に所属していて、それによって家庭が破壊されたことによる恨みであり、政治信条とは関係がない」という話が出てきます。こうした犯人の供述は、基本的には警察が報道機関にリークをしてくるものです。事件当日から「特定の宗教団体」というワードは出てきていました。

 これも前編の記事でもお話しした“速報主義”の話と同じですが、この特定の宗教団体が「世界平和統一家庭連合(旧統一教会)」であるとネット上で指摘され始めます。ただ報道では「特定の宗教団体」という言い方がされていました。海外大手メディアのニューヨーク・タイムズやワシントン・ポストの記事でも、この時点では“religious group”(宗教団体)などという表記で、固有名詞は出していません。

なぜ団体名を報じなかったのか?

新聞

※イメージです

 なぜ団体名を報じなかったのか? 新聞報道に関して、警察が言ったものをただ載せるのではなく、裏取り取材をしてから報じるものだという原則論があるからです。海外メディアは当然その原則論にのっとって、特定の名前を伏せている可能性は高いと思います。それ自体は僕は正しいことだと思うし、裏を取ってから報じるべきだと思います。

 ですが日本の地方メディアは、警察発表をそのまま報道する例が多いと思うんですよね。それなのに、今回は固有名詞を報じなかった。その姿勢自体は正しいと思います。ネット空間では「なぜ報じないんだ」というツッコミがいろいろ出てくるんですが、犯人はもう逮捕されているわけですから、ちゃんと時間をかけて裏を取ってからでもいいわけです。

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