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大坂なおみの会見拒否が「自分勝手な行動」では決してない理由

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メディアが何を伝えたいのかを考えるきっかけに

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 大坂選手の行動のあと、それを厳しく非難していたはずのフランステニス協会の会長が記者会見をボイコットするという笑えないようなオチまでつきました。人間は答えたくないときは答えたくないもんなんだな、ということですよね。

 それがましてや試合後のアスリートへの質問です。僕が前回言ったような記者会見のエンタメ性とは別に、スポーツというリアルタイムで行われていることをレポートする上で必要なことではあるとは思いますが、どうしようもない質問にもたくさん付き合わされる面もある。

 そういった意味では「決まりでインタビューがあるから、よろしく」という姿勢のメディア側が、自分たちがしてきた行動が何だったのかを考えるきっかけになったわけですよね。少なくとも僕はそう思いました。

 それに対する反応も、メディアから出てきています。メディア自身が何を報じているのか、何を伝えたいのかを考えるきっかけというのは、この大坂選手のボイコットがなければ気づかなかったと思うし、正式な手順などを踏んで「こういう理由でやりません」と言えば「その理由だからか」と考えが止まってしまう。

 そうなると、グランドスラム4大大会の主催者や記者の人たちが「自分たちがやっている行動はなんなのか」を考えるきっかけが与えられないわけです。

会見拒否は“利他的な行動”

 今回の件は、大坂選手自身がうつ症状で悩まされているという、自分に帰属する問題として終わらせるのではなく「アスリートにとってのメンタルのダメージが大きい」という言い方をした。

 自分以外にも、いろいろ状況で試合に臨んでいる人がいて「その人たちのことも考えたほうがいいんじゃないの」ということが含まれているわけです。自分が辛いからということじゃないんですね。スタート地点が非常に利他的。僕はすごく大事なことだなと思いました。

 振り返れば、大坂選手はブラック・ライブス・マター(BLM)の犠牲になった方々の名前を1人ずつマスクにつけて、試合に勝利することによって多くの個人の名前をアピールするといった行動をとりました。

 これは、BLMが「黒人の」とか「マイノリティーの」といった大きい言葉で語られ、それが「デモ隊の」や「デモ隊の暴力が」といった大きい言葉で打ち消し合っていることに対して問題を提起している。

違う、これは1人ひとりの人生の問題なんだ」「この人には名前があり、人生があり、そしてそれが無惨にも奪われてしまった」ということに対しての「lives matter」であって、1つひとつライフ(生命)がマター(関係)しているんだという考え方を見せてくれたわけです。

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