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あなたが本当に「やりたいこと」の見つけ方。人気アナウンサーと科学ライターが語る<吉田尚記×鈴木祐>

ビジネス

収入も効率も度外視。職業選択は「流れ」

対談

鈴木祐さん

――ちなみに鈴木さんは、なぜサイエンスライターという職業を選んだんですか?

吉田:傍から見ても、めちゃめちゃ面白そうな仕事ですもんね。エビデンスに基づく“効率の鬼”が適職だと思った理由は気になりますね。

鈴木:収入も効率も全く考えてなかったですね。完全に流れです(笑)。高校生の時から科学論文ばっかり読んでいたんですよ。本を読んでは、引用元の文献を探して国会図書館に通っていたんです。本当は科学者になりたかったんですが、勉強が苦手だったので(笑)。数学のテストも全然点数が取れなくて。だけど、統計の勉強だけはしていました。論文には統計データは必須ですから。

吉田:めちゃくちゃ科学論文が好きなんですね!

鈴木:年に1回くらい、ものすごい論文と出会うんですよ。その時は震えますよ! だから効率とか度外視です。効率なんか考えていたら、お金にもならないし、サイエンスライターなんてやってられません。

吉田:お会いする前は「全ての事象にはエビデンスがある」とか言い出す、悟った人の可能性もあるなって思ってました。でも、自分の適職探しは「流れ」、そもそも「やる気がない」とかだいぶ違う(笑)。こんな人間味あふれる方だとは思いませんでした!

やりたいことなんか誰も予想できない

対談

――お二人は異色のキャリアですが、仕事選びに悩む若者は多いと思います。アドバイスすることはありますか?

吉田:難しいですよね。ちなみに、やりたいことを見つける研究ってあるんですか?

鈴木:人間に本来やりたいことはないというのがデフォルト(あるべきものがない)だと分かっているので、そういう研究はないんですよ。自分が好きなこと、やりたいことなんか誰も予想できない。目の前のことにリソースを注ぐしかないんです。

吉田:もう賭けるしかないんですね。僕も就職によって強制的にベットさせられた口ですからね。事前に自分が好きなことなんか分かるわけない。例えば、セクシービデオだって自分はこんなジャンルが好きだったのかって、びっくりする出会いってありますよね(笑)。やっぱりランキング上位から選んでもダメなんですよ。自分の性癖と向き合うためには、レンタルビデオ屋のビデオ棚に行くしかないんですよ。鈴木さんはどう思います?

鈴木:うーん、僕のやっていることも性癖みたいなものですからね。吉田さんの生き方はすごくいいと思います。好きなことにガンガン首を突っ込んでいって、とりあえずタネをまく。それが仕事に繋がっている。

吉田:ネットで酷評されたり、ひどい目に遭うこともありますけど(笑)。真面目に言うなら、何をやってもそうそう死ぬことはないと伝えたいですね。でも、自分が得しようとか、相手を貶めようとかいう動機での行動は、うまくいかない。ぜひ興味のおもむくままに行動してほしいです。

<取材・文/中野龍 撮影/山田耕司>

【吉田尚記】
1975年、東京都生まれ。慶應義塾大学文学部卒業。ニッポン放送アナウンサー。ラジオ番組でのパーソナリティのほか、テレビ番組やイベントでの司会進行など幅広く活躍。2012年に第49回ギャラクシー賞DJパーソナリティ賞受賞。著書に『元コミュ障アナウンサーが考案した 会話がしんどい人のための話し方・聞き方の教科書』(アスコム)など。Twitterアカウント:@yoshidahisanori

【鈴木祐】
1976年生まれ。10万本の科学論文の読破と600人を超える海外の学者や専門医へのインタビューを重ねながら、現在はヘルスケアや生産性向上をテーマとした書籍や雑誌の執筆を手がける。著書は『最高の体調』『科学的な適職』(共にクロスメディア・パブリッシング)ほか。Twitterアカウント:@yuchrszk

1980年東京生まれ。毎日新聞「キャンパる」学生記者、化学工業日報記者などを経てフリーランス。通信社で俳優インタビューを担当するほか、ウェブメディア、週刊誌等に寄稿

元コミュ障アナウンサーが考案した 会話がしんどい人のための話し方・聞き方の教科書

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