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新入社員が「酒びたりの」地方研修に。文化の違いが招いたピンチ

コラム

社会人初の「どん底」は逃げ場がない

「都会暮らしの弊害も感じましたね。会社が家具家電付きのアパートを借りてくれたんですが、周囲にはコンビニもありません。これが当たり前なのかもしれませんが、自炊もろくにしなかった私にとっては本当に苦痛でした」

 また工場の作業補助がメインなど想定とは違った研修内容もストレスに。初めての一人暮らしということもあり、徐々にモチベーションが低下。朝起きるのも嫌になるほどでした。研修内容、現場、私生活……。佐治さんが精神的苦痛を抱えながらも、3かカ月間の研修を乗り切り、今も同じ会社で働けている理由はとても単純でした。

「一番大きいのは逃げ場がなかったからですね(笑)。泣きつける人もいませんし、とにかくやりぬくしか方法はなかったんですよ。あと、ここで折れてしまうと、工場の方々との信頼関係が築きにくくなることも分かってしましたし」

 佐治さんが営業する商材のほとんどは、鹿児島の工場で製造するため、納期や在庫の調整などを都度、やりとりしなければなりません。そのため、ここで不満などを漏らして、頼りない姿を見せてしまうと、今後の社会人生活に大きく影響してしまうのです。

「自分の考えや感情を発信する」

工場

 その結果、表面上は今でも工場のスタッフとは円滑にコミュニケーションがとれていると、佐治さんは言います。

企業文化や地域の文化にはギャップを感じましたが、社員の方々はみんな良い人たちだった。それも初体験だらけの研修を乗り切れた理由のひとつだと思います。結果だけ考えると、あの時の経験は貴重だったと思います」

 それでももし、企業研修をやり直せるとしたらどうするかと尋ねると、佐治さんは「自分の考えや感情をもう少し発信すればよかったかな」と答えてくれました。

 初めての人を迎え入れるのは相手も同じ。だかこそ、どのような環境でも抱え込みすぎるのではなく、少しずつでも理解してくれる人を増やすため、自分から発信する。佐治さんの学びは、あらゆる社会人にも通じることかもしれません。

<TEXT/藤冨啓之 イラスト/パウロタスク(@paultaskart)>

WEBコンテンツ制作会社「もっとグッド」代表取締役。ライター集団「ライティングパートナーズ」の主宰も務める。オウンドメディアのコンサルティングのほか、ビジネス・社会分野のライターとしても活動

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