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「料理の鉄人」が最初のお客様。50代で“奇跡”の農家デビューした4代目

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 農林水産省が昨年8月に発表した、2016年度の日本の食料自給率は38%。食料自給率とは、国内の食料消費が、国産でどの程度賄えているかを示すが、先進国のなかでは最低の水準にまで落ち込んでいる。

 ちなみに、農水省が公表している最新のデータによれば、世界各国の食料自給率は、アメリカが130%、カナダは264%、オーストラリアは223%、ドイツは95%、イギリスは63%、スイスは55%、韓国は43%となっている。国土の大小にかかわらず、日本の食料自給率の低さは際立っているのだ(引用:農林水産省「食料需給表」)。

 その背景には農業従事者の高齢化や人材不足といった根深い問題があるのはすでに周知の事実だが、その一方で、新たな芽を成長させようとしている動きもある。

農家の4代目が挑む、改革

もりとう農園

もりとう農園の販売風景

 彼らはこれまでとは違った方法で、収益率の高い農業を営んでいる。その一人、福島県須賀川市で4代農業を続けている「もりとう農園」代表の森藤重基さん(54歳・男性)に話を伺った。

――本日はよろしくお願いいたします。先ほどまで実際に野菜を販売していましたね。すみませんお忙しいところ……。

森藤重基(以下、森藤):いえいえ! 恵比寿には毎週末に来ているので!

もりとう農園

恵比寿ガーデンプレイスで毎週末に開催されている「恵比寿マルシェ」

――毎週ということは、福島県の須賀川市からわざわざ毎週、恵比寿にきて販売しているのでしょうか?

森藤:毎週日曜日は「恵比寿マルシェ」(生産者と消費者を食でつなげるプロジェクト“マルシェ・ジャポン”に参画した、農家直送・直売のもののみを取り扱う期間限定市場)で10~17時まで販売しています。

 朝一、軽トラで須賀川市を出て、今日もこの後、高速に乗って帰ります。妻には「ほんとに好きよね」って言われます(笑)。月曜日から金曜日までは自分の畑で農作業をして、休日は販売という1週間の流れで生活しています。

――さきほど、お店も拝見しましたが、棚に商品がほとんど残ってなかったですね。売れ行きはいかがですか?

森藤:持ってきた野菜はほぼ売れました。だいたいいつもそうです。というのも、恵比寿マルシェに出店するのは初めてではなく、ありがたいことに毎回買いに来てくれる固定のお客さんもいらっしゃいます。

もりとう農園

もりとう農園の商品は、少しのお米を残しほぼ売り切れ

――なぜ、恵比寿マルシェを選んだのでしょうか?

森藤:もともと私の親世代はJAとか第2農協、第3農協といわれる米の買い取り業者に農作物を販売していました。しかしながら、大きな流通業者に卸すと、生産者が望まないかたちで消費者の手に渡ってしまうことが少なくありません。

 そのため僕の代からは、大きな流通業者に卸すのをやめて、直接お客様に販売するように変えていきました。恵比寿マルシェもその一環です。

――森藤さんは、須賀川市にある農家の4代目と伺いましたが、どういった背景で農業をされているのですか?

森藤:もともと私は、行政の人間です。18歳のときから50歳まで32年間、いまの須賀川市が合併する前身の長沼町という人口6000人程度の小さな村役場に勤めていました。そして、50歳を機に、両親から畑を受け継いで今に至ります。

――50歳で農家デビューですか。決断の理由は何だったのですか?

森藤:両親がやっていたものを継いだのですが、同時期に娘が東京に出ていってしまい……。娘に会いたくて、米売りを始めたんです(笑)。