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「日本の事故物件」に外国人労働者が関心を寄せる意外なワケ

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外国人が日本で物件を借りづらい理由

成仏不動産

神奈川県座間市のマンション。元売り主の親御が孤独死。死後2か月で発見。特殊清掃業者が入ったものの、ニオイが残っているということで、NIKKEI MARKSに相談があったという

――賃貸物件のオーナーが外国人入居者を拒否する理由とは?

金:帰国や支払遅延などのリスクが挙げられますが、最大の理由は「文化の違い」だと思います。フローリングに靴をはいたまま上がってしまうなどの国の文化はもちろん、ゴミ出しといった地域独自の文化、あるいは近隣住民とのやりとりが、クレームに発展する可能性が高いとオーナーさんは考えているようです。

 韓国人の場合、キムチの匂いを気にされることも多いですね。同じ隣人でも日本語と外国語が聞こえるのでは、受け取られ方も異なりますから。外国人の入居が日本人よりも厳しいのは、通常の物件であっても、事故物件であっても基本的には変わりません。

――事故物件と知らずに、事故物件を借りてしまう外国人もいるとか。

顧:これは私も経験があります(笑)。2年前に大学院に入るために来日したとき、入居直前まで話が進んだ物件があったのですが、そこが事故物件だったのです。たまたま契約直前で「大島てる」(事故物件公示サイト)を見て気付いたのですが、本来あるべき事前の告知はもちろんなく、問い合わせてもそのことは教えてもらえませんでした。

 結局、その部屋に住むことはあきらめました。また、私は海外の交流アプリ「ZHIHU」などを使って、日本に住む外国人とコミュニケーションを取っているのですが、「隣の部屋で自殺者があったが、事故物件になるのか」とか「大島てるに載っていたけど告知は受けていない」という相談は少なくありません。特に、来日して日が浅い留学生の相談が多いですね。

事故物件の告知義務がないことも

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臭いの根源を突き止め、汚物除去と清掃を実施。その後、販売活動をしたところ、約80万円で成約に至ったという

――日本人と同じように事故物件を気にする人も多いんですね。

顧:基本的には「人が死んだ部屋」に対するイメージは、日本人も外国人も同じだと思います。「外国人はドライ」という印象のお持ちの人も多いと思いますが、若干臭いが残っている部屋でも価格を重視して気にせずに住んでしまう日本人の若者もいましたし、事故物件を選択肢に入れるか否かは、あくまで個人の考え方次第です。

 ただ、日本では心理的瑕疵物件の告知義務がある分、自国よりも事故物件だと分かりやすいという環境の違いはありますね。

――他国では事故物件の告知義務はないのですか?

金:少なくとも韓国にはありません。「大島てる」のようなサイトもないので、事故物件を意識する機会事態がそこまで多くないと思います。SNS経由で後日炎上するケースもありますが、日本の怪談やホラー映画のように、事故物件に関わるコンテンツもたくさんあるわけではないですし(笑)。

 そもそも韓国の賃貸物件は、日本のように退去者が掃除するのではなく、入居者がお金を出して清掃するなど仕組み自体が異なるのです。だから、来日して初めて事故物件を意識する外国人も少なくないと思います。2020年4月には、民法が改正されて事故物件を含む「心理的瑕疵物件」の売主への規定が強化されるなど、日本は世界でも有数の事故物件に関わる法整備が進んでいる国だと思います。

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