名門レナウンだけじゃない…コロナ倒産した国内外「アパレル業界」5社
需要の完全な回復は1年程度必要か
また、百貨店を主な販路としている企業は、「新型コロナ禍において休業以外にも、その独特の販売形態から様々な影響を受けている」と岩尾氏は指摘している。
「主に百貨店で店舗展開するアパレルの場合、特殊な仕入れ形態の影響を受けて、資金回収期間が長くなる傾向があります。具体的には、百貨店が『委託仕入』や『売上仕入』という販売形態を選ぶ場合のことです。これらの販売形態では、アパレルは要求に合わせて店舗を商品で埋めなければいけないが、この商品在庫に投下された資金は百貨店によっては保証されません。
しかも百貨店はテナントに対して基本的にカード決済を義務付けています。そのため、ただでさえ売上のタイミングが遅いのに、カード決済によって資金回収はさらに遅れるのです。一方、アパレルが支払う費用は仕入や人件費や家賃など毎月発生します。こうしたことから資金繰りが元から難しい業界といえるでしょう」
需要が完全に回復するのには1年程度
確かに、百貨店と取引を行っていた企業は、レナウンの他にも「(株)エースコーポレーション」(負債額:7億9000万円)などがある。また百貨店での催事販売の中止を理由に挙げている企業を含めれば、倒産した企業はさらに多い。
「とはいえ洋服は本来生活必需品。そのため5月末にまずは自粛が緩められた地域の店舗から、その後6月以後に大都市で百貨店が通常営業を始めれば、ある程度は需要が回復すると思われます。ただし、CAや美容部員といったもともと被服に比較的多くの収入を使う人たちの収入自体が減ってしまっているため、アパレル需要が完全に回復するのには1年程度は必要かもしれません」
もとより厳しい状況の中にあったアパレル業界。同じく危機に瀕している百貨店の倒産が生じれば、共倒れの形で多くのアパレル企業の倒産は免れないだろう。「レナウンショック」がドミノ倒産の始まりでないよう願いたい。
<TEXT/日和下駄>