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楽天モバイル「月額2980円」で首都圏限定?使いやすさに懸念

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「実店舗」は大手キャリアの4分の1程度

楽天モバイル

公式サイトでは、実店舗に赴かないことを勧めている(3月10日時点)。防疫という観点からは極めて妥当な措置だが、スタートダッシュをかけたい代理店には痛手だ

 ところで大手キャリアの看板といえば、街中でもよく目につく存在である。それもそのはず、日本全国に「ドコモショップ」などの販売店を展開しているからだ。都会だけでなく、幹線道路沿いが発達している郊外や地方でもよく目にするのが、大手3社の看板である。

 eコマースを主業とする楽天グループだが、今後は、楽天モバイル(MVO)を販売する実店舗というインフラが必要になる。すでに楽天モバイル(MVNO)の実店舗(代理店を含む)が日本全国に約600店ほど展開されているが、この数は大手キャリア(ドコモ・ソフトバンク・KDDI各社2300~2400店)の4分の1程度だ。

 さしあたっての懸念としては、「楽天回線エリア」の圏外にある店舗で、新しい「UN-LIMIT」プランが多数販売されてしまうケースが想定される。先に述べたように、もっぱら「パートナーエリア」で使う場合、このプランは不便で割高だ。

 せっかくの野心的なプランなので、「全然使えない」という誤った認識が拡がるのは避けるべきだろう。となると「UN-LIMIT」の販売が全国化するのは、今秋か来春以降となるのではないだろうか。

公取委、コロナウイルスと楽天販売網

 楽天グループといえば、まったく別のニュースでも最近話題になった。2月28日には「楽天市場」での送料の取り扱いをめぐって、公正取引委員会から緊急停止命令が発された。

 しかし、楽天グループと行政との関係は対立ばかりではない。今般サービスを開始する第4のキャリア・楽天モバイルは、携帯回線市場の自由競争に寄与する存在であり、総務省が待ち望んだ“優秀な転校生”という立場に立つ。

 そんな楽天モバイルが本当に“優等生”なのかといえば、取引慣行のうえで気になる点がひとつだけある。携帯キャリアのトップページで、「コロナウイルスの影響を鑑み、なるべく楽天市場店でのお申し込みをご検討お願いいたします」と、自社eコマースへの誘導をしているところだ。

 現在の日本が新型コロナウイルスの感染拡大を防ぐべき局面にあることは疑いようがなく、この呼び掛けには公益性がある。とはいえ、この取り扱いがいつまでも続くようでは、小規模な代理店はやっていけない。

 eコマースで躍進した楽天グループだが、実店舗での販売なしに、全国の基地局を維持できるほどのユーザー数を実現できるかは未知数である。大手3社の各2400という店舗数は淘汰と収斂(しゅうれん)を経た末のものであり、追いかける楽天も1000以上の実店舗を展開することが望ましいはずだ。

 現実の都市に看板を掛ける販売代理店という存在を、楽天モバイルはどう扱っていくのだろうか。諸々含め、今後に注目していきたい。

<TEXT/ジャンヤー宇都>

「平成時代の子ども文化」全般を愛するフリーライター。単著に『多摩あるある』と『オタサーの姫 〜オタク過密時代の植生学〜』(ともにTOブックス)ほか雑誌・MOOKなどに執筆

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