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キングコング、非テレビスターのままブレイクするまで

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 今年2019年の顔となった芸人と言えば誰だろうか? 2018年のM-1グランプリで優勝後、テレビで大躍進した霜降り明星、安定した人気で露出を拡大している千鳥、ものまね芸人ではMr.シャチホコ、りんごちゃんの活躍も目立った(敬称略、以下同)。

 一方で、彼らのような王道路線とは別に注目を集めたコンビがいる。キングコングの西野亮廣(39)と、梶原雄太(39・現:カジサック)の2人だ。

キングコング

※吉本興業公式サイトより

 今年で結成20年目。これまで、彼らの道のりは決して平たんなものではなかった。人気絶頂だった2003年に梶原は失踪。2カ月半ものあいだ芸能活動を休止した過去も持つ。

 相方の西野は、バラエティ番組の“ひな壇”には座らず、いつからか「ウォルト・ディズニーを倒す」と絵画の世界に没入。絵本を出版し、ニューヨークで原画展を開くなど、お笑い芸人らしからぬ活動を進めるなかで、「どこに向かうのか?」と疑問の声が沸き上がったのはほんの数年前の話だ。

 そんな彼らがどうやって人気を再浮上させたのだろうか? そこにはいくつかの理由があると考えられる。

養成所時代からエースだった2人

 そもそもキングコングは養成所時代からのエースだった。在学中にNHK上方漫才コンテストで最優秀賞を受賞するなど、前代未聞の出世頭として人気者になっていく。芸歴1年目にして『はねるのトびら』(フジテレビ系)のレギュラーに抜擢。芸人として最高のスタートを切った。

 ところが、しばらくすると彼らの人気は停滞する。芸歴が浅いなかでのデビューだったため、人気に実力が追いついていなかったのだ。2012年には11年半続いた『はねる』も終了。そこからテレビで見かける機会もグッと減った。

 ここからの西野の行動が波紋を呼びはじめる。SNSを活用し、自身のトークライブのチケットを手売りするなど、一見駆け出しの若手芸人にも似た行動に出た。さらに、タモリのアドバイスを受け、絵本の制作に邁進。オンラインサロンを起ち上げ、その作業工程をメンバー間でシェアするなど、まるでブロガーやIT企業の社長のような動きもとりはじめた。

 しかし今振り返ると、これらはすべて西野のマーケッター的な才能の開花だったと言っていい。そもそも西野は、“お笑いでトップになる”ことを目標に芸人になった。

実は最初からあった?マーケッター的な才能

キンコン西野

※西野亮廣公式サイトより

 今年9月に放送の『しくじり先生 俺みたいになるな!!』(テレビ朝日系)に出演した梶原によると、『はねる』でキングコングがセンターを務めることになり、自身が立ち回りにプレッシャーを感じていたなか、相方の西野は「天下を獲る準備できたな」と鼻息を荒くしていたという。つまり、西野にとってお笑いは頂点を掴むひとつの手段だったのだ。

 たびたび西野は「お金持ちじゃなくて“信用持ち”になるべき」といった趣旨の発言をしているが、ライブのチケットを手売りしていたのも、視聴率という不明確な数字ではなく、確実なファンを獲得するための行動だったように感じる。

 自身の絵本『えんとつ町のプペル』(幻冬舎)をネットで無料公開した際には、「「ありがとう」という《恩》で回る人生があってもいいのではないか」との持論をブログで表明。バッシングの声もあったなか、絵本としては異例の累計発行部数40万部を突破(2019年12月時点)。しっかりと結果を残している。

 独自のマーケティングを成功させつつ、最近では、ネットやテレビの番組でご意見番的な役回りで存在感を見せはじめた。テレビは、先見の明がある“かぶき者”として、新たに西野を迎え入れたと言っていいだろう。

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