bizSPA!フレッシュ

キングコング、非テレビスターのままブレイクするまで

暮らし

時代の先をいっていたキングコングの芸人像

 キングコングの経歴を振り返ると、実に2度もスターの座を手に入れている。1度目はテレビ、2度目はネットだ。しかし、そのあいだには厳しいいばらの道があった。それは、メディアが多様化していくなかで、視聴者側の意識が変化していったことも影響しているように感じる。

 たとえばコンプライアンスの問題だ。かつてのバラエティ番組は、より過激な発言をすることで若者の支持を集める傾向にあった。しかし、スマホの普及によってネットユーザーの批判を無視できなくなり、テレビ局の自粛モードは加速。とくに東日本大震災後はますます保守的になり、少しでもバッシングがあれば謝罪会見を開いたり、謝罪文を発表したりするのが当たり前になった。

 そんな状況下で大衆が求めたのは、サンドウィッチマンに代表される“人柄のよい芸人像”だった。キングコングは、数年前までその真逆の存在だ。とくに西野は、SNS上のコメントでたびたび炎上するなど「嫌いなタレント」の代表格。梶原は全国ネットでの露出が減り、世間から注目さえされていなかった。これをひっくり返したのが西野の行動力だ。時代よりも先にいくビジネスモデルやコミュニティ形態を示し、成功させたことで、世間の目は「奇才の芸人」という評価へと変わっていった。

 若手時代は「イケメン芸人枠」と持ち上げられ、人気が落ち込めば「面白くない」となじられたキングコング。しかし、西野は決して世間に振り回されることがなかった。そのブレない姿勢が世間からの信用を勝ち取り、相方・梶原にも勇気を与え、YouTubeチャンネルの成功の土台を支えていたように感じる。

 2019年キングコングの2人は、テレビスターとは別の「時代の寵児」として存在感を発揮した。我が道を進んだことで、テレビの世界でも彼らのブランド価値が上がったと言っていいだろう。今後はどんな活躍を見せてくれるのか…来年以降の彼らの動きに注目したい。

<TEXT/鈴木旭>

フリーランスの編集/ライター。元バンドマン、放送作家くずれ。エンタメ全般が好き。特にお笑い芸人をリスペクトしている。個人サイト「不滅のライティング・ブルース」更新中

おすすめ記事