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震度6弱の地震で電車はどうなる?西武鉄道の復旧訓練で見たリアル

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 例年、秋になると鉄道事業者の多くは、車両基地などを舞台に事故や災害に備えた訓練が実施されている。

西武鉄道

開会式の様子

 西武鉄道(以下、西武)では11月12日、玉川上水車両基地であらゆる事態を想定した訓練が行なわれ、ほぼ時間通りに終了した。

震度6弱の地震で事故発生を想定

 この訓練は同日10時07分、震度6弱(東京湾北部を震源)の地震が発生したことを想定している。

 拝島線玉川上水―武蔵砂川間で線路が一部陥没、玉川上水第2号踏切上で立往生したクルマ(軽自動車)と第4309電車(西武新宿9時13分発の準急拝島行き)が衝突。その際、乗客約100人のうち十数人とクルマのドライバーが負傷した。

 また、沿線では地震の影響により、停電など多数の被害が発生し、池袋線の被害が甚大なため、新宿線を早期に復旧させることを特定災害対策本部で決定したという設定だ。

地震と事故が相次いで発生

① ハシゴを使った避難・誘導訓練

西武鉄道

事故はクルマの一部分が先頭車の台車にはさまっているという想定

「強い揺れが来ます。落ち着いて揺れに備えてください」

 10時07分、訓練開始。ほどなく、運転司令から緊急地震速報の発報指令があり、サイレンが鳴り響く。列車の運転士は警笛を鳴らす。ここでは30000系スマイルトレインの2両車と軽自動車が用意され、列車の運転士が急ブレーキをかけたが、間に合わず乗用車に衝突したという設定だ。車掌は「これから線路の点検を行ないます。運転再開まで、しばらくお待ちください」と車内放送を流す。

西武鉄道

運転士は信号炎管を使い、対向列車の運転士に異常を知らせ、非常停止させる

 乗務員は運転司令所に踏切障害事故発生の報告をしたあと、運転士は身を乗り出し、クルマのドライバーを確認。先述通り、負傷のため、車外に出られない状態だ。そのあと、列車を降り、信号炎管を使う。これは対向の列車に異常を知らせるもので、多重事故を防ぐ役割がある。一定の距離を走ったあと、線路上に置く。

 そのあいだ、車掌は車内を巡回し、状況を把握する。乗客の中に負傷者がいたので、運転司令経由で救急車を手配。また、西武鉄道社員が同乗していた場合、無傷なら救護活動などに務める。

「大丈夫ですか? 今、救急車を手配していますので、頑張ってください」

 車掌がケガ人を励ますように言ったが、訓練とはいえ、「頑張ってください」に疑問を持つ。

 急病で救急搬送された経験上、頭の中がパニックになって、“生きるか死ぬかの瀬戸際”としか考えられず、頑張れる余裕がない(その後、救急車が来ても、病院側が相次いで急患の受け入れを拒否したため、3回目でようやく搬送先が決まった)。急病、ケガどちらも「しばらくお待ちください」が適切な言葉だと思う。

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