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コネもツラいよ…入社直後から先輩・上司に嫌われて「社内ニート」に

学び

1週間で無視され、「社内ニート」確定

 後日、中谷さんが聞いた話では、会長が中谷さんを強引に事務職として採用し、後の対応を現場に任せきりで急遽退職。このような経緯もあり、社長や従業員の人たちは中谷さんのことを入社する前から快く思っていなかったというのです。

「とりあえず自分から積極的に動こうと思い、資料作りなどを手伝おうしたのですが、みなさん自分の仕事に手を出してほしくないみたいで……。なんとなくネットを検索したときに『社内ニート』というワードを見つけて、『これだ!』と思いましたね!」

 社員教育に人員を避けない会社では、新入社員をOJT(現場研修)という名目のもとに放置することは少なくありません。ただ、それでも簡単な仕事を振られるのが一般的です。中谷さんが無視される状況は、そのまま3か月も続いたとのことです。

3か月で覚えた仕事は草むしりと掃除

5月テーマ_13初稿

「ずっと椅子に座っているのが耐えられなくなったのは、入社してから1週間以上過ぎた頃です。ネットサーフィンをしていても注意されることはなかったのですが、とにかく時間の進みが遅いんです。暇を持て余していたので、会社の敷地内にある小さな畑の草むしりと古い倉庫の掃除を買って出ることにしました。誰の業務範囲でもなかったので、あっさりと了承されました」

 それから3か月かけて、会社の敷地に3か所ある車庫兼倉庫と荒れ放題だった畑の草むしりをたった一人で続けた中谷さん。埃だらけ、土塗れになりながら、その胸中は焦りと後悔ばかりだったといいます。

「ちゃんと就活しておけば良かったと何回後悔したかはもう覚えていませんね(笑)。社会人としての研修も実際の仕事も経験していなかったので、Twitterやフェイスブックで同期が成長していく姿を見るのが怖かったです。でも当時は、もうどう動けば良いのかわからなかったのでただ無心で掃除と草抜きをしていました」

 最初はほこりだらけだった倉庫も3か月かけるとほぼ掃除する場所はなくなり、荒れていた畑も綺麗になりました。ちょうどその頃に、中谷さんに転機が訪れます。

他部署の部長からスカウトされ、リスタート

 ある日、畑で草むしりしていると、スーツ姿の中年男性から声をかけられた中谷さん。その男性は普段は支社にいる営業部長でした。そこで「ようやっとるなぁ! 暇だったらウチで仕事せんか?」と突然のスカウト。どうやら以前から、中谷さんを気にしてくれていたようなのです。

 事務職からの辞令をもらって間もない部署をまたぐ配置転換になりますが、中谷さんは「はい!」と間髪入れずに返事をしたといいます。その返事を聞いた営業部長が根回しをして、中谷さんは1週間後には本社から離れて営業としてキャリアをスタートしました。

 それから約5年間、中谷さんはその会社で営業マンとして腕を磨き、今はヘッドハンティングされた会社でキャリアアップを実現しているといいます。

「コネで無理矢理入社したからこそ、余剰社員扱いされてしまったと思います。ただ、そんな状況でもちゃんと見てくれている人はいます。社内ニート状態から救ってくれた営業部長さんとは今も親交があります。最初はツラかったですが、尊敬する人と出会えたのは入社したおかげ、コネでも働けて、今は良かったと思っています」

 コネ入社もそれ以外も入社後の教育環境は会社によって千差万別。辛いことも多いと思いますが、今、自分のなかで最善と思える選択肢をある継続して行動することで、状況が改善するかもしれません。

特集・新入社員がおどろいた「入社後ギャップ」

<取材・文/藤冨啓之 イラスト/小池祐子(@ikeko322)>

WEBコンテンツ制作会社「もっとグッド」代表取締役。ライター集団「ライティングパートナーズ」の主宰も務める。オウンドメディアのコンサルティングのほか、ビジネス・社会分野のライターとしても活動

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