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本業の勤務時間外でも解雇に…勤務先での副業トラブル事例3つ

コラム

 働き改革の一環として、大手企業が副業を容認するなど、大きな動きがあったこの1年。前回の記事では副業がうまく行っている人の事例を紹介しました。

OL・デスクワーク

※画像はイメージです(以下同じ)

 今回は、逆に副業が原因で会社とのトラブルが起こり、裁判にまで及んでしまった3つの事例を紹介したいと思います。

 第4回で書いた通り、副業禁止の就業規則に違反したからといって、解雇などの懲戒処分が必ず認められるわけではありません。

 副業で懲戒処分が法律的に認められるのは、本業の遂行に支障が出る場合と、機密を漏らしたりして企業利益を害する(法律用語では「企業の秩序を乱す」)ことが認定される場合だけです。それでは実際の事例と結果を見てみましょう。

【第6回】本業の勤務時間外に別会社で勤務=解雇

【事例1】1957年 永大産業事件
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内容:本業の勤務時間外に別会社で勤務して副収入を得ていた
事由:本業の業務遂行に著しい支障・影響があると認められた
結果:懲判で会社側が勝訴し、正式に解雇が認められた
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 メーカーで働いていた伊藤さん(仮名)は、勤務先A社の就業時間外に、別会社であるB社でも労働し、収入を得ていました。本業の就業規則では、「許可なく会社以外の業務につくこと」は禁止されており、懲戒処分の対象となることが明記されていました。

 しかし許可を取っていなかった伊藤さんは、副業が発覚したことにより会社に解雇されてしまいます。この解雇を不服として、伊藤さんは裁判所に提訴します。判決結果は、就業時間外は労働者の自由と認めつつも、本業に支障がでるほどの副業実態であったとして「懲戒解雇は正当」と認めました。

 B社では夜勤が多く、勤務時間も12時間と比較的長いにも関わらず、同じ勤務日の日中に勤務先A社で8時間働くという過酷な生活を送っていました。これが本業に影響を与えていると認定。また、伊藤さんは副業先のB社と雇用契約を結び、一時的な副業ではなく、“継続的な雇用関係”であることも問題視されました。

 本件は、たとえ就業時間外の副業であっても、本業の遂行に著しく影響を与える場合、懲戒処分が認められるという重要な判例となっています。

大学教授が就業時間外に、語学講師=解雇無効

外国人講師

【事例2】2008年 東京都私立大学教授事件
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内容:大学教授が就業時間外に、語学講師などで副業
事由:本業遂行に支障がなく、企業秩序を乱すものではないと認められた
結果:裁判にて解雇を無効とする判決結果(労働者側の勝訴)
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 東京の私立大学教授である安田さん(仮名)は、外国語学部に所属し語学を教える一方で、就業時間外を利用して、通訳・塾講師・セミナーなどを行い、副収入を得ていました。

 そんななか副業のため大学授業を休講していたことが、学生からの訴えで明らかになり、大学より懲戒解雇処分を受けました。この大学の職務規程では、「許可なく公職若しくは学院外の職務に就き、又は事業を営むなどの行為」を禁止しており、安田さんは届け出を行っていませんでした。

 安田さんは、副業は就業時間外に行っていたことから、懲戒処分は無効であるとして提訴しました。裁判では、副業が、職場秩序に乱しているか、本業に支障をきたしているかが争われました。

 判決は「安田さんの副業は、許可を受けていない以上、形式的に職務規程に違反していると言える。しかし、副業の労働時間は1回数時間程度であり、本業に支障があるとは言えず、起業秩序を乱しているとも言えない」として、解雇無効が言い渡されました。

 本件は、たとえ、許可を得ていない副業でも、本業に悪影響を及ぼさない限りは、懲戒処分が無効とされた事例のひとつです。

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