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脱税事件で追徴1億円…井上敬一“元ホスト”社長が到達した仕事観

キャリア

 株式会社FiBlink代表取締役・井上敬一さん(43歳)は、元ホストという経歴を持つ実業家です。

井上敬一

【井上敬一】一般社団法人 恋愛・結婚アカデミー協会代表理事。1975年生まれ。立命館大学を中退しホスト業界に。ホストクラブグループ「SHION GROUP」オーナーを経て現在は企業で講演活動を中心に活動

 かつて伝説のホストと呼ばれ、大阪ミナミでホストクラブを経営していた頃、顧問税理士が逮捕。それをきっかけに自らも起訴され多額の負債を背負いますが、現在は実業家として返り咲くことに成功。その一部始終はドキュメンタリー番組『ザ・ノンフィクション』(フジテレビ系)で10年間にわたり密着、シリーズ第8弾まで放送され、大きな反響を呼びました。

 逆境に打ち勝つマインドはどのように培われたのか。井上さんの仕事人として生きるための秘訣を探ります。前編に続き後編では、例の税理士の一件から何を学び、いかにして実業家として再起を図ったかをお話いただきました。

顧問税理士の逮捕「こんな大事になるとは思わなかった」

――約12年前の『ザ・ノンフィクション』では、従業員のホストたちを叱咤激励しつつも見守る姿が印象的でした。当時と現在で井上さんの中で変化はありましたか?

井上敬一(以下、井上):経営者という観点でみると、部下の適正を見るようになりましたよね。ホストクラブを経営していたときは、入店基準は設けてなくて、来た者は基本的に全員採用。それで全員育てて全員社長にしようという考えでした。

 でも社長って適性なんですよ。経営者で生きる人間と、そうじゃない人間がいる。だからこの適正を見てあげないと相手も潰れるという。

 今でもチームで働いてますけど、その人の一番の強みは何なのか。ちゃんとそこを把握して相応しいポジションに置いてあげないと、自分も相手もイライラするだけで終わってしまいますよね。

――ホストクラブのオーナー時代に、顧問税理士の脱税により井上さん自身も懲役2年、執行猶予3年、追徴課税1億円という判決を受けました。

井上:僕、テレビで知ったんですよ。「あ、うちの先生逮捕されてる」って。最初は「なにがあったのかな?」くらいでしたね。

 でも、いきなり警察から「お前、脱税しただろう」ってめちゃくちゃ怒られたり、取り調べを受けたりして、ようやく事態を把握することができました。まさかこんな大ごとになるとは思いませんでした。完全に信頼して任せていたので。ただ、額面を見ての焦りはありませんでしたね。「1億、2億でしょ」って。ホストをやってたから金銭感覚がおかしかったんでしょうね。1店舗出すのに1億円以上出してたこともあったし。

 お金のことよりも人が離れていくのが辛かったですね。悔しさとか、悲しさとか。僕は従業員のことをずっと家族だと思ってきたので、そっちの落ち込みが大きくて、飯も食えないし眠れなくなるんですよ。大阪の新聞でも報道されたので、「オーナーは悪い人なんじゃないのか」って1店舗ごと独立されたりもしました。

1億円の追徴課税。4万円の利息が付く毎日

井上敬一

――経営者という立場でないとなかなか経験しないことですよね。

井上:ターニングポイントだったのも事実です。経営者として「わからない」で済まされないことがある。税金周りの把握なんて、まさにそうですね。そして自分の行動が、これまで従業員に言っていたことに反していることに気づきました。

 従業員のホストは、よく「給料を上げてくれ」と言ってきます。売り上げの50パーセントが彼らの取り分になるんですけど、もっとパーセンテージを上げてくれとか、何で全部くれないんだって言われることもあります。まあ、ホストあるあるなんですけど。

 彼らからしたら、稼いだお金を店に取り上げられたように感じるかもしれませんが、店の取り分というのは、経営していく上でのランニングコストを引いた後のものです。セット料金、広報にかかる部分、ウェイターに支払う給料の部分でもある。だから、従業員には自分のショバ代くらい払うのは当然だと説得してきました。

 でもあの脱税で、僕は国に対してそれをやってなかったんですよね。僕らは道路も使ってるし、公園も使ってる。税金で賄われるいろいろなインフラを使ってます。そこに気づけたのが大きかった。日本という国で働かせてもらっているという意識は、経営者として絶対に持たないといけないんです。

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