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脱税事件で追徴1億円…井上敬一“元ホスト”社長が到達した仕事観

学び

「1億円の追徴課税」逆境をどう乗り越えたのか?

――現在はホスト業界を引退して、別分野で活躍されています。やはり脱税の一件から業界を離れる考えに至ったのでしょうか。

井上:脱税事件より前から引退する考えはありましたよ。ただ、この一件がなかったら、ずるずるホスト業界にいたかも知れないですね。

 脱税が発覚してからは、約1億円の追徴課税がきて、毎日4万円の利息がつくようになります。もう、手っ取り早く返すことばかり考えてました。でも、そんなこと考えて始めた事業は上手くいかない。1000万円近く投資してWEBセミナーを立ちあげたけど、すぐに赤字になりました。

 それから、自分にどんな卓越性があるか、強みがあるか、なおかつ社会から求められてるところとは何だろうと考えました。よく「自分のやりたいことやれ」って言われるけど、自分がやりたいことと、人から求められてることが合致することが一番のビジネスポイントなんですよね。

 結果として、人との信頼の築きかたとかコミュニケーションにポイントを見出しました。あとは、それがどんな場面で求められるかを考え、営業研修や婚活セミナーに行きつきました。

 人は逆境に陥ると、ついついラクな道へ行こうとします。しかしラクな道にはビジネスチャンスはない。ちゃんと自分の強みが活かされないといけない。自分がやりたいことよりも自分に求められてること、もっというと自分がやるべきこと。そういうのが大事だなって感じています。

「従業員は家族」は今思えばエゴだった

井上敬一

――ビジネスで付き合っていく上で信頼できる人間かそうでないか、どのように見極めていますか?

井上:人の紹介で仕事が生まれることがあるかと思います。そういう繋いでもらった縁を大切にできるかじゃないでしょうか。

 例えば、紹介してもらったら、それっきりではなくて、「この前、紹介してもらった人と会うことになりました」ってひと言報告してくれる人は、間違いなく信用できる。ごく当たり前のことだけど、ほとんどの人がやってない。

「ご縁をいただきました」って、感謝の気持ちを表せる人は間違いなく信用していいのかなって思いますね。

――その反面、人と関わっていると、裏切られる場面もあります。今まで人間不信に陥ることはありましたか?

井上:実は僕は人間不信になったことがないんですよ。何かあっても誰かのせいではなくて「自分の徳が足りなかった」と思ってます。脱税の一件に関しても気づきの部分が大きかった。

 当時は共依存みたいなのに陥ってた気がしますね。従業員を家族だと言い切って、「家族だからしんどくても一緒に頑張ってくれる、それが当然!」みたいな考えがありました。でも、よくよく考えたら、従業員たちからしたら仕事の関係なんですよね。頑張ってくれることに一方的に期待して、それに応えろというのは違いますよね。

 本当だったら経営者はこんなときこそ、負債は自分でぱっと返して、「お前らはいつも通り働いてくれ」って言えないといけないのに。言い訳ではありますが「お前らは家族だから、俺の給料なんてちょっとでいい。あとはお前ら全員に還元する」というのが頭にありました。これも今思えばエゴですけどね。

 経営者の責任とは、従業員がずっと安心して働けるようにすること。そういう覚悟を決めたのなら、従業員から金の亡者扱いされようが、不測の事態に対処できるだけの資金をプールする必要がありますよね。溺れている人がいたら、先ずは自分が浮き輪つけないと助けられないんです。

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