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民間企業の「障害者雇用率」が引き上げに。現場への影響は?

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 しかし、雇用主側としてはマニュアルもないため、対応に追いつかず、戸惑いを隠せないのが実情だ。

「これまでは障害者雇用について、企業が着々と努力する期間がありました。職域の開拓とか、特例子会社を作ろうかどうしようかなど、企業側は受け皿作りを一生懸命やってきました。ところがここにきて急速に精神障害者の雇用を進めなければならなくなったのですが、受け入れる下地がまだ十分にできていないのが現状です」(畠山氏)

 法律で定められている障害者の雇用率の推移は、1998年は1.6%だったのが、その後、1998年に1.8%になった。0.2%上がるのに10年かかっている。また2013年に2.0%になったが、それまで15年かかっている。今回の改正で雇用率は2.2%になったのだが、前回の改正からはまだ5年しか経過していない。

 そして3年後の2020年までには、2.3%に上がる予定で、各企業は対応に迫られているのだ

基準に満たない企業には「ペナルティ」も

ビジネスイメージ―会計

 もし、法定雇用率が達成されていない場合、事業主は国に対して障害者雇用納付金を納めなくてはならない。逆に法定雇用率が達成されている場合、その雇用数に応じて国から障害者雇用調整金等が支給される。 

 現在、常時雇用している労働者数が46人を超える会社での「障害者法定雇用率」は、2.2%だ。労働者数が100人を超える事業主で、障害者雇用率の2.2%を超えている場合は、その超えて雇用している障害者数に応じて一人につき月額2万7000円の「障害者雇用調整金」が国から支給される。

 しかし、未達成の事業主は、不足する障害者数に応じて、1人につき月額5万円の「障害者雇用納付金」を国に納付しなければならない(※ただし、労働者数100人から200人以下の事業主については、2020年3月31日までは、減額特例として月額4万円に減額)。

 法定雇用率を見ると、厚生労働省が障害者雇用の推進に力を入れているのが明らかだ。行政側としては、企業の尻を叩いて雇用を増やそうと思っているかもしれないが、企業側からすると容易なことではないという。

人材不足で障害者雇用はますます困難に

 そこには「人材の問題」がある。特に首都圏においての人材不足が問題になっているのだ。

「全国に労働可能な年齢に達している障害者は約750万人いて、そのうち働いている人が約60万人です。働ける能力のある人、働くことが困難な人、働ける可能性がある中間層の人の3つに分類すると、中間層の圧倒的な部分がまだ働いていません。企業はその中間層の人たちの育成と活用を待っているわけです」(畠山氏)

 雇用率が0.2%上がったら、「もう採りたいレベルの人材がいなくなってきた。新しい職域を提示するのも難しく、切り出す仕事も限界だ」との声も聞こえてくる。

 さらに4月から対象となった「精神障害者」の雇用に関しては、プライバシーの問題もあり、また、本人もあまり語りたがらない場合、どれほどの労働が可能なのか、その判断には難しいものがある。

 今後の企業は、社会の変化とともに多様性を受け入れつつ、利益を上げ、会社を強くしていくという環境づくりが急務となっている。

<取材・文/草薙厚子>

ジャーナリスト、ノンフィクション作家。元法務省東京少年鑑別所法務教官。著書に『少年A矯正2500日全記録』(文春文庫)、『ドキュメント発達障害と少年犯罪』(イースト新書)、『本当は怖い不妊治療』(SB新書)などがある。

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