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発達障害の同僚とどう向き合うか…シビアな現実を人事部が語る

ビジネス

 現在、民間企業、国、地方公共団体は、「障害者雇用促進法」によって、常時雇用している労働者数の一定の割合(法定雇用率)以上の障害者を雇用することが義務づけられています。

 常時雇用している労働者数が46人を超える民間企業での「障害者法定雇用率」は、2.2%で、今年4月に2%から引き上げられました。

 また、2021年3月末までには2.3%にまで引き上げていく計画になっており、各企業は対応を迫られているのです。

 同時にこれまで法定雇用率の対象となっていなかった「精神障害者」が、2018年4月から対象に加えられました。「精神障害者」を採用することで、企業側は多様性を受け入れ、時代の変化に対応しつつ、成長を続けなければなりません。

法定雇用率達成のために努力する企業

会議

※画像はイメージです(以下、同じ)

 会社内で精神障害者雇用についての理解を得ることはなかなか難しいと語る、あるサービス業の人事担当者に話をききました。

「精神障害者雇用については、会議で『包丁持って振り回ったりしたらどうするのか』などという偏見に満ちた議論も出ました。『彼らを知る努力をしてください』と伝えましたが、『社員が500人もいたら目が届かない』とも言われました。

 法定雇用率を考えると、採用しないわけにはいかないのです。彼らはストレスをこちら側に対して自己発信できればいいのですが、実際に屋上に走っていったり、殺虫剤を飲んでしまうなどということもありましたね。障害者雇用をこれから推進していくためには、必要な経験だったと思います」

 こういった具体的な事例があると、雇う側としても中途半端に対応することはできないとのことです。

発達障害を持つ社員をめぐり労働審判に発展するトラブルも

Law.

 某金融関係の企業では、労働審判にまで発展した例がありました。

「発達障害の中の自閉症スペクトラム障害の方でした。非常に偏差値の高い大学を卒業されたので、勉学は優秀な方でしたが、対人対応はかなり乱雑なところがありました

 障害がゆえにやむを得ないとは言え、周りのものを認めない、自分の非を認めない。人のせいにすることが相次いで、いろいろ部署を転々とした末、最終的には労働審判になりました。当然そういう優秀な人ですから裁判に訴えますよね。和解金で解決しましたが、事実上は会社側の勝訴でした」

 この社員は自分のやり方が最高だから他人は口を出すなと、唯我独尊で仕事をする人だったようです。共感を呼ぶところもあったそうですが、周囲に気を遣わせてしまい、チーム全体のパフォーマンスを下げてしまうところがあったといいます。

「上司を上司とも思わない感じの人だったのです。その人は精神障害の手帳を持っていて、自分で自閉症スペクトラム障害だと申告して障害者雇用で入社しました。結局5年ほど在籍しましたが、その間、周りの人は本当に忍耐強く彼の面倒を見てくれていましたね」

 うまくコミュニケーションできないのは症状であって、本人には全く落ち度はない、でも周囲は大変な思いをする…ここに受け入れの難しさがあります。

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