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<第5回>「金」の時代の終焉!そして夢にあらわれたカール・マルクス――『貨幣論』と『トイ・ストーリー』を混ぜてみた

コラム

この物語は岩井克人の『貨幣論』が、もし『トイ・ストーリー』だったら? という仮定のもとに書き進められています

【第5回】「金」の時代の終焉! そして夢にあらわれたカール・マルクス

<登場人物>

貨幣論・金

金:光りかがやく金属。王座の戴冠式をすませ、貨幣という地位を独占しているが……

貨幣論・紙幣

紙幣:金貨に代わるあたらしいもの。偉い。

貨幣論・リンネル

リンネル:20エレのリンネル。本連載の主人公。服の素材に使われる亜麻布のことで、英語で言うとリネン。

貨幣論・お茶

お茶:10ポンドのお茶。

<前回までのあらすじ>
「貨幣」として王座に君臨した「金」。しかし「金貨」や「紙幣」の誕生によってその地位を脅かされてしまう。
そして、ただの紙きれのはずの「紙幣」に、商品たちは不思議な魔力を感じてしまう。
はたして「金」の立場はどうなってしまうのか……!?

「紙幣」に価値があるのは「金」があるから? それとも?

貨幣論

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 ひとつの「奇跡」がおこっている。「本物」の貨幣としての金のたんなる「代わり」として導入された金貨が、その金になり代わってみずから「本物」の貨幣となってしまったのである。(岩井克人『貨幣論』ちくま学芸文庫、一三五頁)
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「紙幣」があらわれてからというもの、「金」はあまり姿を見せなくなってしまいました。

 どこへ行ってしまったかというと、城の中にいたのです。かつてぴかぴかと「金」の地位を象徴するようにかがやいていた城ですが、今は摩滅しはじめていました。

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 ひとつの「奇跡」の成就は、あらたな「奇跡」を準備する。悪鋳と削りとりによって軽くなりながらも、いまではそれ自体「本物」の貨幣として商品世界に流通している金貨の「代わり」に、今度はまったく無価値の紙幣が流通に投じられる。(岩井克人『貨幣論』ちくま学芸文庫、一三五~一三六頁)
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貨幣論・金
金「しょせん、紙幣や硬貨はわたしの代わりでしかない」

貨幣論・金
金「やつらの価値はわたしがいるからこそ成り立っているのだ」

※金本位制……貨幣の価値を金が裏付ける制度。中央銀行が紙幣と同額の金を持ち、紙幣と金の交換を保証する。紙幣の価値はそれによって裏付けられる。

貨幣論・紙幣
紙幣「それはどうかな」

貨幣論・金
金「!?」

貨幣論・紙幣
紙幣「きみがいなくてもぼくらの価値は変わらないんじゃないかな」

貨幣論・金
金「何を言う! お前らなんかただの紙じゃないか!」

貨幣論・紙幣
紙幣「たしかにただの紙っきれだ」

貨幣論・金
金「ぴかぴかしてないじゃないか!」

貨幣論・紙幣
紙幣「まったくぴかぴかしていない」

貨幣論・金
金「そんな魅力のないおまえに、わたしと同じ価値があるはずがない!」

貨幣論・紙幣
紙幣「しかし、現にみんなはきみを抜きにして『価値』を考え始めているよ」

貨幣論・金
金「だから、それは最終的にわたしと交換できるから……」

貨幣論・紙幣
紙幣「はたして、どうだろうね。ちょっと来てみなよ」

 紙幣は得意げに言いました。その自信はどこから来るのだろうと金は不思議に思いました。

 彼は夜空にある月のようなもので、太陽の光を反射しているのに過ぎないのに。その太陽は自分のはずなのに……!

 力強く歩く紙幣についていきながら、金はそう思うのでした。