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台湾のグランピングは自己責任度高め。だがしかし!とにかく美味しい台湾式バーベキュー

コラム, 暮らし

コロナ禍が落ち着き、「海外旅行需要・再燃」のニュースをよく目にするようになったが、中でも台湾はコロナ禍以前の渡航需要が増えつつあり、「日本とゆかりがあり旅しやすい」と再度注目を浴びている。

日本だけでなく、台湾でもキャンプ&グランピングが静かなブームに

他方、台湾は「リピート渡航する人が多い」ことでも知られ、こういったリピーターは約3年ぶりの台湾旅行において、より深い現地体験をする傾向にあるようだ。

台湾初心者から、こういったマニアまでのニーズの多様化に呼応しているのが「KK day」というチケッティングサイト。

運営元は、台湾に本社を置く企業で、台湾・日本はもちろん世界中の様々な移動チケット、ツアーチケット、エンターテインメントやスポーツ観戦などの発券を行なっている。

台湾・日本だけでなく世界各国の「深い魅力を知ることができ、体験できる」観光チケットの多くを発券するサイト「KK day」

同サイトで、台湾における様々な観光チケットを検索すると、以前ではさほど多くなかった料理教室や手作りアクセサリー教室の体験チケットなどがヒットした。さらに、意外と多くヒットするのが「キャンプ」「グランピング」にかかわるもの。聞けば、台湾でも日本同様のキャンプ&グランピングブームが起きており、コロナ禍の3年間で各地で関連施設などが増えたという。

「これは面白い」と思った筆者。今年春たまたま仕事で台湾を巡る機会があったので、この「KK day」を使って、グランピング施設の宿泊予約をしてみることにした。1泊2食付きで2万円前後。台湾都心部における高級ホテル並の価格だが、特別な体験をするわけだから格段高いとは思わない。

果たして、台湾のキャンプ&グランピングの特徴は何か、そして日本のそれとどんな違いがあるのだろうか。この実体験をもって紹介する。

一般の外国人旅行者にはアクセスしにくい場所にある

向かったのは台湾東部の太平洋沿いにある長濱エリア。

筆者は台湾でレンタカーを使って自走で行くことができたが、そうでない場合は最寄りの駅・玉里から約40分ほどタクシーに乗らないと行くことができない。一般の外国人旅行者にとっては極めてアクセスしにくい場所だが、日本に立ち返ってみても、それは当然のこと。キャンプ施設やグランピング施設は、えてしてアクセスしにくい場所にあり、だからこそ都会では味わえない体験をできるのだ。

現に、今回目指すグランピング施設は、太平洋沿いに面しており、天気さえ良ければ夕焼けや、東からの日の出といった景色を楽しむことができるロケーション。「これはいい!」とワクワクしながら向かった。

しかし、この日はあいにくの曇り空でときおり小雨もバラついていた。さらに目当てのグランピング施設には、どうも筆者しか宿泊客がいない様子で、なんとスタッフも駐在していなかった。

遠路はるばるやってきた台湾東部・長濱エリアにあるグランピング施設。しかし、ほかの宿泊客はおろかスタッフもいなかった

その施設での過ごし方は、メールでの指示だった

番犬が吠えていたグランピング施設の事務所

巨大なボール型の各宿泊施設を前に、しばし呆然とする筆者。グランピング施設の事務所には、鎖に繋がれた番犬が「ワンワンワン」と筆者を威嚇するように吠えている。

うーん、困った。どうしたらいいのだろう……何気なく、自分のスマートフォンを見てみると、LINEにメッセージの通知があった。グランピング施設のスタッフからのもので、今日から1泊の宿泊の手順が記載されている。記載はもちろん台湾の共用語である中国語。

言葉が不慣れな筆者だが、翻訳サイトなどを駆使してなんとか理解した。そこに書かれていたのはおおむね以下のような内容だ。

「スタッフはいないが、バーベキューの食材は、事務所の中にある赤い保冷バッグの中に入れておいたので、これを使うべし」
「バーベキューグリルを使う際は、火の扱いに注意。万一の際は近くにある消化器で消化すべし」
「木炭などは事務所の中にあるものを使うべし」
「ゴミは綺麗にまとめ、自分で持って帰るべし」
「何か問題があれば、連絡をすべし」

……グランピングなのに、結構投げっぱなしというかラフな感じではある。台湾に不慣れな人・バーベキューなどの火の扱いに不慣れな人は困惑するかもしれない。

しかし、この自由な感じが筆者にとっては逆にありがたく、自分なりに過ごし方を考えるのは意外と楽しいものだ。また、グランピングはさておき、キャンプの場合は特に「自己責任」で楽しむものでもある。そこにスタッフが誰もおらず、仮に延々と番犬が吠え続けているとしても、まったくもって不満はない。

……と、自分に言いきかせてみたが、おそらく台湾内にあるほかのキャンプ施設、グランピング施設でもこういう感じなのだろう。この点は良くも悪くもサービス過多の日本とは大きく違うところだと思う。

宿泊施設は実に衛生的。トイレ・シャワーだけでなく冷暖房も完備

グランピングの宿泊施設

アメニティなども完備

ただし、宿泊施設は実に衛生的で、アメニティなども完備。トイレ、シャワーが施設内にあり、これだけはいっさいの不便がなかった。もちろん冷暖房も完備している。

さて、完全に日が落ちる前に、バーベキューを始めることにした。暗くなってからの火おこしや調理などは何かと不便だからである。と思って、宿泊施設の目の前にあるバーベキューグリルに向かうと、さきほどまでの小雨がだんだん本降りになってきた。パラソルを広く立て、雨をしのぐように火起こしをし、「台湾1人バーベキュー」を楽しむことにした。

あいにくの雨にもめげず敢行することにした「台湾1人バーベキュー」

とにかく美味しい台湾式バーベキュー

キャンプやバーベキューには比較的慣れている筆者なので、火おこしなどは日本同様のそれとなんら変わることなく、すぐにできた。そして、スタッフが用意してくれていた食材を焼いて食べることにしたわけだが、これが想像を絶する美味しさだった。

用意されていたバーベキュー用の食材

火おこしをして焼き上げることに…

これが美味!

用意されていた食材の内容は、あわびなどを含む魚介類、魚のつみれ団子、ソーセージ、スペアリブ、豚バラ肉など。この内容は、そのときどきで変わるはずだが、魚介類は港が近いこともあり鮮度抜群で最高だし、肉類につけられた下味が、日本にはないスパイスなどの効果で、いかにも台湾的な味わい。これが実に美味しく、酒がグングン進むのだった。

日本と違い「自己責任度高め」「キャンプ寄り」の台湾のグランピング

ただし「咳をしても一人」である。正直寂しくもあったし、パラソルの外に出れば雨でビショビショになったりもしたが、宿泊施設に戻ればフワフワのベッドでゆっくり休むこともできた。

翌朝は晴れ間が出て、昨晩よりも景色を楽しむことができた。メインの昨晩が雨だったことは残念ではあったが、台湾らしいグランピングを楽しめたことには違いなく大満足だった。

翌朝は晴れ間が出て、太平洋の景色を満喫することができた

そして、今回の体験で感じた、台湾のキャンプ&グランピングの特徴と注意点は主に下記である。

・通常のキャンプに対して豪華な施設を気軽に楽しめるグランピングだが、台湾のそれは、スタッフが常駐しないなど、サービス的には比較的キャンプ寄りで「自己責任度高め」である。

・言葉・土地勘・風土に不慣れな外国人旅行者は、できれば現地・台湾人(特に成人男性。理由は後述)と一緒に行くほうが良い。

・台湾では多くの人の間でブーム以前から「露営(キャンプ)」文化が根付いており、特に台湾人男性はキャンプの際の対策に長けている人が多い。また成人の台湾人男性の多くは兵役を経験していることから、日頃の訓練で火おこし・緊急時の救助に長けている人が多い。このため、特に外国人旅行者が、こういったキャンプやグランピングを楽しみたい場合は、台湾人男性と一緒だと安心だ。

・現地の台湾人が同行しない場合でも、買い出しが生じた際や、万一の事故などにも備えて、複数名の外国人旅行者で行くほうが良い。

・今回のように天候の移り変わりが激しい台湾。季節によっては台風が頻繁に来る時期もあるので、宿泊する季節には注意をしたほうがベターだ。

・後片付けやゴミの処理は日本同様で、丁寧に行い「立つ鳥跡を濁さず」を徹底するべきだ。

久しぶりの海外旅行では「もう一歩深く楽しむプラン」を

これらを十二分に理解した上で、相応の「大変さ」も含めて楽しめる旅行者であれば、台湾におけるキャンプやグランピングは実に面白いと思う。

台湾と言うと、台北での活気あふれる街のイメージが強いと思うが、ひとたび地方に出向けば、それとは全く違う景色や風土があり、その印象はガラッと変わる。そのため、現地台湾人の中には、「台湾の真の魅力は台湾ではなく、風光明媚な地方部の空気にこそある。これこそが本来の台湾の魅力である」という人も多い。

コロナ禍でずっと我慢していた海外旅行。久しぶりに赴く際の、従来の定番観光だけでない「より深い現地の魅力」に迫る旅は確かに素晴らしいものだと思った。

今後、台湾をもちろん各国を旅する予定がある人はぜひ従来の「定番の観光ツアーとは違う旅」も取り入れてみてはどうだろうか。台湾をはじめとする各国の「もう一歩深く楽しむプラン」は冒頭でも触れた「KK day」でたくさんのチケットがあるので、こういったものを見てプランを考えてみるのも良いだろう。

今回の台湾でグランピングのように、これまでの「定番の観光ツアー」とはまた違う旅をすることで、赴く土地の表情はまた違って見え、そしてまた新しい発見がきっとあると思う。

<取材・文/松田義人>

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KK day
https://www.kkday.com/
 

音楽事務所、出版社勤務などを経て2001年よりフリーランス。2003年に編集プロダクション・decoを設立。出版物(雑誌・書籍)、WEBメディアなど多くの媒体の編集・執筆にたずさわる。エンタメ、音楽、カルチャー、 乗り物、飲食、料理、企業・商品の変遷、台湾などに詳しい。台湾に関する著書に『パワースポット・オブ・台湾』(玄光社)、 『台北以外の台湾ガイド』(亜紀書房)、『台湾迷路案内』(オークラ出版)などがある

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