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平均年収860万円「完全栄養食ベンチャー」上場以来“株価軟調”が続くワケ

ビジネス

BtoCは解約率が高いから…

 ベースフードの公募価格は800円で、上場時の時価総額は407億円でした。2022年2月期の売上高は55億4500万円で、PSRは7.3倍。今期予想の売上高を当てはめても4.0倍あります。ベースフードと同じ食品系企業のPSRは1倍程度が標準的でした

サブスクリプション型の販売形態をとっているベースフードの企業評価を、SaaSに寄せたのでしょう。しかし、これはあまりに無理があります。ベースフードの原価率は45.1%。フリーは16.6%です。損益分岐点が高いベースフードは、SaaS企業を超える成長性がなければ黒字化できません。

 しかも、ベースフードの解約率は6.8%ですが、フリーの解約率は1.2%です。一般的にBtoCビジネスの解約率は高く、SaaSのように着実に収益性を高めることがしづらい特徴があります

現在の市場の評価が適正か

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完全栄養の主食「BASE FOOD」シリーズ

 青汁のキューサイを買収し、健康食品を扱う「ユーグレナ」のPSRは2.5倍。ベースフードの2.1倍と極めて近い水準にあります。ベースフードの企業評価は、現在の水準がむしろ適正と言えるでしょう

 スタートアップの上場時の時価総額は100億円以下が中心。それを大きく超えたのが、VTuber事務所の「ANYCOLOR」で、上場時の時価総額は450億円でした。ANYCOLORは営業利益率が30%を超える有望な会社でした。ベースフードは407億円で、ANYCOLORと近い水準にありました。その評価があまりに無理があったのかはこれまで見た通りです。

 ベースフードの株価が公募価格を上回るためには、黒字転換が1番の近道でしょう。同社の社員数90人弱のベンチャー企業ですが平均年収は860万円台と、社員の待遇を重視する意思を感じます。しかし、ビジネスモデルを大きく変えない限り、黒字化は難しいでしょう。代表の橋本氏は難しい舵取りを求められています。

<TEXT/中小企業コンサルタント フジモトヨシミチ>

外食、小売り、ホテル業界を中心に取材を重ねてきた元経営情報誌記者。現在はコンサルタントという名の中小企業経営者のサンドバッグ役を務めるかたわら、経済の面白さを広く伝えるため、開示情報を分析した記事を書いている。好きな言葉は美食家・北大路魯山人の「硬め、麺少なめ、ニンニクマシマシ」

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