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企業型確定拠出型年金の「落とし穴」。絶対に知っておくべき3つのリスク

コラム

112万人が「損している」現状とは?

――企業型確定拠出年金において、112万人分の年金資産が放置されている現状をどう考えますか?

大野:個人の資産形成という観点からだとデメリットしかないですね。企業型DCを行っていた企業から中途退職等する際に6か月間、適切な移行手続きをしなければ国民年金基金連合会に資金が自動移管され、その後は運用することができなくなります。

――積み立てた資金が自動移管されるデメリットとは?

大野:その結果、長期的な「資産形成・資産運用」は不可能になり、有力な金融商品が現れたとしても企業型DCで蓄積した資産を投入できず、いわば実質的な「塩漬け状態」になってしまいますね。さらに自動移管後は利息が付かないどころか「月額52円、年間624円」が資産から差し引かれ続けます。

 また企業型DCの受け取り要件である「10年以上の加入期間」に自動移管中の期間は含まれません。放置していると何十年にわたってただ資産が目減りし続けるうえ、スムーズに年金を受け取れないリスクが高まるのは100%損しかないといえるでしょう。

企業型DCに導入している人がすべきこと

年金

大野:資産形成のコツはまず「無駄な支出を減らすこと」が重要。今回、話題となっている112万人はその最初の一歩でつまずいているとも考えられます。

 ただ、転職などで中途退職した場合の企業型DCの取り扱いについて、選択肢が複数あるなどわかりづらく、退職後の取り扱いについて、個人の金融リテラシーだけに任せることは危険だと思います。企業型DCを放置するリスク・デメリットを明確に打ち出し、所定の期限内に何かしらの手続きをするよう行政や自治体が促すほかないのではないでしょうか。

――問題を抱えつつも、会社が拠出から給付までの責任を負う確定給付企業年金(企業型DB)に比べて、企業型DCに移行する企業が多いと聞きました。

大野:企業型DBと比べても一長一短ですが、企業型DCは退職給付債務が発生しませんし、運営コストも少ないですから企業にとってメリットは決して小さくありません。「今のところ企業型DCは関係ない」と思っている人も、この先、転職などがきっかけで運用を検討しなければなくなるケースは少なくないと思います。

 転職先が「企業型DC or 企業型DB」をあらかじめ知っておくだけで退職時の運用資金の取り扱いがスムーズになるため、自身の現状の環境に関係なく金融リテラシーを高めておいて損はないでしょう。

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