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なぜ欧米より日本で「面白い間取り図」が生まれるのか?在英建築史家からは驚きの理由が

暮らし

急激な欧米化が間取り図を生んだ

間取り図

建築史家・遠山晃望さん

――日本の間取り図の歴史も、それほど古くはありませんが、最近までヨーロッパに間取り図がなかったというのは意外です。これはなぜなのでしょうか?

遠山:いくつか理由があると思うのですが、まず欧米の家は「ベッドルーム」「バスルーム」と、用途がはっきりしている部屋で構成されています。たとえば、イギリスだと古い家が多くて、間取り図がなくても建物の外観を見れば「ベッドルーム3+ バスルーム1」ぐらいの情報で、だいたいイメージが湧くんですね。

 でも、日本の家はそうじゃない。たとえば町家のような古い家があったら、昔は襖で区切られた1つの部屋だったのに、「寝室とリビングは別」という欧米の発想が入ってきてからは、壁を作って部屋を分けているかもしれない。さらに、新しい家だったら、少しでも広く見せようと、限られた敷地に小さな部屋をたくさん作っているかもしれません。

 そういった意味で、日本では間取り図が必要だけど、ヨーロッパではそれほど必要とされなかったということは考えられるかもしれません。

なぜ日本では面白い間取り図が生まれるのか

間取り図

現在のヨーロッパの物件情報。外観&内観写真はもちろん、間取り図もスタンダードに。パノラマや動画が見られる物件もある

――日本はベッドではなく布団ですからね。寝室とか部屋を分けるという発想がそもそも必要なかったのかもしれません。

遠山:そうですね。それと、もう一つ。欧米の人は日本人ほどマメだったり器用ではなかったという理由が考えられますね。ヨーロッパで日本のような間取り図が一般に出回り始めたのは15年くらい前からだったと思います。もちろん、それまでも間取り図はありましたが、日本のように精密なものではなく、手書きのものが多かったですね。

 図解で解説するより、実際に物件を見てもらったほうが早いだろうと、そんな風潮でしたね(笑)。

――なるほど(笑)。でも、なぜ15年前から急に間取り図が一般化したのでしょうか?

遠山:これは、ロンドン東京プロパティーサービスといった日系不動産会社がヨーロッパに進出して、間取り図を広めたからではないでしょうか。ヨーロッパの不動産会社も、間取り図である程度判断してもらったほうが、結果的に楽だってことに気づいたんだと思います。

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