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円安倒産はさらに広がる…コロナ支援縮小に「心が折れてしまう」経営者も

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 止まらない円安。中小企業はコスト増加に悲鳴を上げている。客離れを心配して、コストを価格に転嫁できないなか、円安倒産が記録的な件数に。このまま倒産件数は増えるのか? 東京商工リサーチ情報本部の後藤賢治氏に話を聞いた。

円安倒産

写真はイメージです

コロナ支援縮小のタイミングで円安に

 円安倒産の危機が迫る――。今年は7月まで2件だった円安倒産が8月に5件と急増した。倒産した企業のなかには60年近く歴史がある大阪府のアパレル卸、最盛期には20店舗を超え展開していた千葉県の婦人靴販売、東日本大震災を乗り越えていた宮城県の合板製造会社の名があった。

円安倒産

 その後も円安は進み、さらに円安倒産は広がりそうだ。東京商工リサーチ情報本部の後藤氏は背景をこう分析する。

2021年度の倒産件数は57年ぶりに6000件割れの5980件でした。これはゼロ・ゼロ融資(実質無利子・無担保)などコロナ支援策によって、倒産件数が歴史的に低く抑えられていたから。

 しかし、支援策の縮小で倒産件数は5か月連続で前年同月を上回っており、倒産件数は底打ちからの反転増が鮮明となっています。企業の経営体力が弱っているなか、ロシアのウクライナ侵攻によるエネルギー高騰、そこに円安が追い打ちをかけている状況です」

仕入れ値が20%上がった企業も

 8月に実施した調査では、円安の影響がマイナスと答えた企業は半数近くに上っている。

円安倒産

「数パーセントのコストを削減するために努力を重ねてきたのに、この円安で仕入れ値が20%上がった企業もあります。コロナの出口がようやく見え始めたところで、次は先の見えない円安です。

 このまま日米の金利差が広がれば、さらに円安は進むかもしれません。9月に価格改定に臨む企業は多いが、これだけ急激に為替が変動すると交渉もまとまりにくい。それで心が折れてしまう経営者も出てきているようです

<取材・文/週刊SPA!編集部>

【後藤賢治】
東京商工リサーチ。2006年入社。横浜支店調査部 調査員として企業の信用調査に従事。現在は、情報本部にて全国の倒産や業界動向などの取材を手がける

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