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外資系コンサルから「長身女性アパレル」で起業した女性社長。きっかけは“敗北感”

ビジネス

「高身長は武器」という言葉がきっかけに

ATEYAKA

「2018年に販売を開始したアイテムは『KIMONO風トップス』という、着用することで着物のように見える服でした。『とりあえずやってみよう』精神で挑戦したものの、やはり周囲の懸念通り、結果は芳しくありませんでした」

「和風だけにするか」「高身長に振り切るか」……。大倉さんがアパレルの方向性に悩んでいると、その当時経営企画として関わっていた芸能プロモーション事務所・ツインプラネットの社員から「大倉さんの身長は武器だし、持とうと思って持てるものではないよ」という言葉をかけられた。

「ツインプラネットさんは個性を長所や魅力と捉える企業なのですが、それまで自分の身長を煩わしくネガティブなものとしか考えていなかっただけに、新鮮な考え方で。さらに『自分にしかできない、自分ごとのほうが人にも響くはず』というアドバイスを受け、現在のATEYAKAとしての方向性が定まりました」

 実際に飛び込むまでファッション業界の難しさを知らず、ノウハウやツテも一切なかったという大倉さん。友人・知人に会うたび「アパレルをやりたいんですが、どこかいい工場は知りませんか」と尋ねるようになったという。しかし、大倉さんが歩んでいた業界ではファッション系に詳しい知り合いはおらず、空振りの日々が続く。

泥臭い方法でアパレルブランドを

「知人からアドバイスをもらい、日暮里の生地屋街を1軒、1軒回っていると、あるカーテン屋さんが『もしかしたら』と、その場で川口の縫製工場を紹介してくれました。泥臭いやり方ですが、デザインでも同じように細いツテを辿ってデザイナーさんを紹介してもらいました。忙しい方だったので一度断られつつ、なんとか頼み込んで1着を作ってもらいました」

 そんな折「KIMONO風トップス」の告知を目にしたアクセンチュア時代の先輩が三重の伝統工芸品・伊勢型紙を紹介してくれた。2019年4月に伊勢型紙の柄を取り入れた服を販売すると、反響は上々。

 元バレーボール選手の大山加奈さんがロングスカートを着用したことで、バレーボール界にも「ATEYAKA」が広がった。最初の売上が生まれるまで1年半がかかり、決して簡単な道のりではなかった。それでも大倉さんは「会社を辞めて起業したのは正解だった」と強く感じたという。

「我が強い人間なので、どうしても上司とぶつかることも多くて。起業してからは、カメラマンやスタイリスト、デザイナーなど、出会う人のジャンルも幅広くなりました。それと、思った以上に世間が優しいというのも発見でした。『バンダイナムコ』や『アクセンチュア』という看板がなくなり『大倉加奈子』になったら誰も相手にしないんじゃないかと恐れていたんですが、お取引などでも門前払いされたことはほとんどありません。もちろんアパレル業界が厳しいという状況もあるかもしれませんが、大きな発見でした」

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