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ブライダル業界の“風雲児”が語る「休みなし」で走り抜けた創業期と今

ビジネス

トップダウン経営からボトムアップ経営へ

テイクアンドギヴ・ニーズ

T&Gがプロデュースした結婚式の様子(同社ホームページより)

 上場を達成してからは、これまでの「トップダウン経営」から「ボトムアップ経営」へとシフトさせていき、今の組織の基盤となる社内文化や風土を育んできたという。

「『人の心を、人生を豊かにする』というミッションに共感してくれる人材を懸命に探していました。起業してから上場するまでは勢いに任せ、トップダウンで突き進んでいましたが、上場後は働いている社員が自己実現を満たせる働き方や職場環境を作り、『自分たちは何がしたいのか』というのを大切にするようになったんです

 そんな野尻氏だが、創業時から現在まで新卒へ伝える、“ある言葉”があるという。

「新入社員に伝える『自分をよく知ってください』という言葉は変わっていません。自分の価値観を知るかどうかで、人生に差が出てくるんですよ。人の価値観は10年くらいでひとつの価値がつくられると言われていますが、『願望』と『価値観』は違うもので、過去の原体験からしか後者は生まれません。自己実現を成し遂げれば、豊かさを感じられ、心も満たされやすくなるわけです」

100億の赤字も「社員をリストラしない」

 以降も、海外リゾートウェディング事業、ブライダル周辺事業、レストラン事業、コンサルティング事業、ドレス事業、ホテル事業など多角化戦略を進めていき、成長を加速させていった。2017年度以降は連結売上高600億円以上を維持し、社員数も1731名(連結・2021年3月31日現在)と順風満帆に会社経営を進めていた矢先にコロナ禍が発生した。

 T&Gも2020年度は100億超の赤字に陥った。野尻氏は「コロナ禍が長期化するのを見越して、いち早くリスクマネジメントに動いた」とし、苦難から立ち直るために取り組んだことについて説明する。

「ブライダル業界全体の市場規模が1.4兆円あったうち、コロナで1兆円が吹き飛んでしまったことで、ほとんどどの会社も多大なダメージを被ることになりました。当社も2020年4月の時点で最悪のシナリオを試算し、経営危機を乗り越えるべく、早めに手を打ってきたんです。

 その中でまず決めたのは『社員をリストラしない』ということでした。『目の前のお客様をしっかり守り、安心してお客様と向き合ってほしい』と現場の社員に伝えるとともに、緊急事態宣言が発令される前に従業員とお客様の安全を鑑みて、日本全国の会場で結婚式を中止しました」

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