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中国に敗れた「蓄電池生産」シェア。苦しむ日本企業に勝ち目はあるか

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ガソリン車と比べれば性能はまだまだ…

EV

 蓄電池として主流であるリチウムイオン電池(以下、Liイオン電池)ですが、容量が不十分な点や充電時間が長いという性能面での課題を抱えています。EVを例に見ていきましょう。例えば日産自動車の「リーフ」は、航続距離は450~550km前後しかなく、急速充電でも満タンになるまでに60分程度必要とします。5分程度の吸油で600km以上走行できるガソリン車と比べれば性能はまだまだといったところです

 そして、Liイオン電池は性能面以外にも課題があります。1つ目にあげられるのが容量低下です。Liイオン電池は充放電を繰り返すと充電容量が徐々に減っていき、充放電を500サイクル繰り返すと容量低下が急に進行すると言われています。

 これは電池内の物質構造が変化するためで、酸素原子が少しずつ漏れ出すことで容量低下が起きてしまうという研究結果が発表されています。前記のリーフの場合、メーカーが8年もしくは16万kmのバッテリー交換保証を設定していますが、長期で使う場合は自費で交換しなければなりません

課題は山積みで頭を悩ませるメーカー

 寿命が低下したLiイオン電池は廃棄することになりますが、ここで2つ目の課題、リサイクル問題を抱えています。同電池は内部に引火性の有機溶剤を含むほか、腐食性物質を含むため現状では特殊な設備で焼却処分されています。焼却することでスラグ(固形のカス)が得られますが、アスファルト舗装の下に敷く路盤材としての用途しかなく、資源が有効活用されているとは言えません。

 薬品をつかった抽出工程によりコバルトとニッケルを金属として再資源化する方法もありますが、高コストな点がデメリットです。ちなみにリチウムを再資源化する方法は現状では無いようです。

 そして3つ目の課題がLiイオン電池の重量です。特にバッテリー重量に関してはEVの航続距離に直結する問題であるため、自動車メーカーは車体重量の軽量化に頭を悩ませています。搭載するバッテリーの容量にもよりますがバッテリーは250kg~500kgもあるため、EVは同じクラスのガソリン車と比較してバッテリー分余計に重くなってしまいます

 充電容量が不十分であるほか、それ自体の重量が足枷となる、それでいて寿命が短いというLiイオン電池の欠点を克服しない以上、EVは消費者にとって選択肢には入らないでしょう。そして、EVが売れなければLiイオン電池の需要も伸びません。

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