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大江戸温泉物語は「事業価値はないに等しい」ハゲタカファンドが買収した狙いとは

ビジネス

“ハゲタカファンド”として知られる米投資ファンド「ローンスター」が、大江戸温泉物語を運営する大江戸温泉物語ホテルズ&リゾーツを2022年2月28日に買収しました。売却したのは米大手投資ファンドであるベインキャピタル。

大江戸温泉物語

大江戸温泉物語 別府清風

 全国の温泉旅館を運営する大江戸温泉ですが、アメリカの投資ファンドの手の上で転がされていることになります。なぜ、ローンスターはコロナ禍で疲弊する温泉旅館をこのタイミングで買収したのでしょうか?

インバウンド需要にも期待できたが…

 大江戸温泉物語は経営破綻した地方の温泉旅館やホテルを安値で買収し、再生して資産価値を上げることを得意とする会社です。プリント基板の設計などを手掛けるキョウデンの創業者・橋本浩氏が出資をし、2004年4月から社長を務めました。橋本氏といえばパソコンのSOTEC、スーパーの長崎屋などの倒産寸前に追い込まれた企業を次々と再生させたことで知られる実力者です。

 かんぽの宿「メルモンテ日光霧降」を取得し、「大江戸温泉物語日光霧降」としてリニューアルして大成功させました。2015年2月にベインキャピタルが橋本氏やその一族から全株式を取得。取得額は500億円と報じられました

 買収後のホテルでカニの食べ放題など宿泊客の目を引く仕掛けを用意し、宿泊費も安く抑えたことで団体客、家族客を中心に人気を博しました。特に地方の温泉旅館、リゾートホテルは集客力を失って疲弊しており、温泉街の廃墟化も危ぶまれていました。大江戸温泉物語は救世主と目されます。ベインが買収した当時はインバウンド需要にも期待ができました。

事業価値はないに等しい?

 しかし、経営は決して順風満帆なものではありませんでした。2020年3月期の売上高は前期比2倍以上に膨らんでいるものの、営業利益は出ていません(2018年3月期の売上高は非公開)。

大江戸温泉物語

大江戸温泉物語ホテルズ&リゾーツ業績推移(単位:百万円)※決算公告より筆者作成、以下同じ

大江戸温泉物語

 温泉旅館やリゾートホテルの再生は決して簡単なものではなく、上手く行っている施設とそうではない施設の差が激しいものと予想できます。すなわち、大江戸温泉物語は事業価値がほとんどないのです。価値があるのは保有するホテルや旅館など一部の資産です。

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