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10兆円企業が誕生間近も…実は「薬で儲かっていない」ドラッグストア大手5社の明暗と戦略

ビジネス

4)コスモス薬品:調剤併設率はなんと1%

売上高:7264億円(21/5期)
店舗数:1130店

コスモス

 コスモス薬品は「ディスカウントドラッグ コスモス」を運営する企業です。業界4位と大手ながら初めてその名を聞く方も多いかもしれません。背景には同社の出店戦略が関係しています。

 同社は小商圏(商圏人口1万人)への出店を基本としており、郊外や人口の少ない地域に進出しています。関東の店舗はわずかで、中国地方・四国、九州など西日本がメインです。

 他のチェーンと比較すると売上高の割には店舗数が少なく、1店舗当たりの規模が大きいことが分かります。実際に店舗を見てみると食品や衛生用品の品ぞろえが豊富で、店舗面積はスーパーマーケット並みです。調剤併設率はなんと1%しかありません。ドラッグストアというよりスーパーと考えたほうが良いでしょう。18/5期から21/5期の業績は以下の通りです。

【コスモス薬品(18/5期~21/5期)】
売上高:5560億円➝6111億円➝6844億円➝7264億円
営業利益:227億円➝248億円➝291億円➝331億円

 近年の業績は順調に推移しています。同社は「毎日安い(エブリデイ・ロー・プライス)」をモットーとしながら安さと利便性をウリにしてきました。スーパー並みに食品が安く、スーパーよりも食品以外の品ぞろえが良い店舗は小商圏にはなかったのでしょう。

 競合が少ないなか、店舗数を増やし続け事業を拡大した形です。今後も従来の戦略で出店を続けるようですが22/5期からは調剤業務にも積極的に進出するとしており、他社と同様の動きが見られます。

5)サンドラッグ:柔軟な店舗運営を行う

売上高:6343億円(21/3期)
店舗数:1216

サンドラッグ

 同社は「1店舗2ライン制」をとっているのが特徴です。オペレーションとカウンセリングのスタッフを別々に分け、専門知識をもった店員が客の質問に答えられるような体制をとっています。

 都市型・郊外型店舗の両方を展開していますが、立地や店舗によって商品を変えるなど柔軟な店舗運営を行っています。ちなみに調剤併設率は10%程度しかなく、ドラッグストアチェーンの中では低いほうです。その他、九州を中心にディスカウントストア「ダイレックス」を展開。18/3~21/3期の業績は以下の通りです。

【サンドラッグ(18/3~21/3期)】
売上高:5462億円➝5881億円➝6178億円➝6343億円
営業利益:361億円➝352億円➝366億円➝373億円

 売上高は順調に伸びているように見えますが、営業利益はほぼ横ばいで、利益率は低下し続けています。物流の合理化やセルフレジの導入、電子棚の導入など経費削減策を進めていましたが、拡大に伴う人件費の増加や店舗改装費を抑えられず利益が伸び悩んでしまったようです。

 コロナ禍ではインバウンド需要や都市型店舗の不調がドラッグストア事業の不調をもたらしましたが、ディスカウントストア事業は好調となりました。今後は同社も調剤薬局の併設を進めつつ、「ダイレックス」を東日本にも積極的に展開するとしています。

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