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メダルかじりは「愛情表現」!? 河村市長の言い訳に抱いた、違和感の正体/ダースレイダー

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ビジュアルインパクトだけではない“金メダルかじり”

女子ソフトボール日本代表・後藤希友選手

女子ソフトボール日本代表・後藤希友選手(代表撮影:雑誌協会)

 後藤選手が河村市長を訪れた際のやりとりは、『朝日新聞デジタル』で全文記事で公開されています。金メダルをかじるというのがビジュアルインパクト的には一番大きかったというのは確かですが、やりとりの中になど、セクシャルハラスメントと指摘されざるを得ない発言が相次いでいます。

 その頂点に、金メダルを首にかけてもらったとき、突然マスクを外してメダルにかじりついたということがあったわけですね。金メダルをかじるというパフォーマンスは、メダルを取った選手がフォトセッションで行うことが多いです。これもどうなんだという指摘もありますが、実際には撮影する側のポージング要求で出ることが多いと言われています。

 選手が自分で取ったメダルを自分でかじる分にはいいですが、突然現れた72歳のおじさんがかじる、というのはまったく意味が違うんです。河村市長のメダルかじりのインパクトがなぜ強いかというと、テレビでこの様子が中継され、それがあっという間にSNSで拡散された影響が大きかったと思います。

 下手したら、金メダルをめぐる報道でもっともインパクトが強かったのは、この河村市長の金メダルかじりではないかと、僕は感じます。これが東京五輪2020のレガシーのひとつとして残ってしまったのではないか? とすら思います

メダルかじりは「最大の愛情表現だった」?

 この行為に対する批判が非常に多かった。アスリート、メダルへの敬意が足りない、という理由です。僕個人の前提としては「金メダルというものをどう考えるか」「どういう価値があるか」というのは、獲得した選手にとってそれが大事なものなのかどうかに尽きると思っています。

 僕からすると、NBCのテレビ番組で渡されるプライズにすぎないと思っているので、他人が取った金メダルは特に価値がないわけですけど。どうも日本社会にとっては金メダルがとても大事なものとされていることもわかる展開でもありました。

 河村市長はかじったことについて「最大の愛情表現だった」と述べています。20歳の女性が自分の実力で取ったメダルにかじりつくということが愛情表現だという考え方についても、なかなかすごいものがありますが……。河村市長は金メダルへの憧れも表明していましたが、横取りならぬ横噛みを憧れの対象にしてしまうことに驚きます。

 実はこの愛情表現なるもののベースの考え方が、この前後の後藤選手とのやりとりにあります。カメラが後藤選手に近寄って顔と金メダルのアップ撮影を続けていると「アップに耐えれるかな」と言ったり、「ええ旦那をもらって。恋愛禁止か?」など、端々に出てくる短い言動に、河村市長が愛情表現と言うもののベースになっている事柄が凝縮されていました。

 それは完全な男性上位目線の、30年以上前の社会感覚がそのまま冷凍パックされているかのような考え方です

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