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「大人の発達障害」のリアル。当事者22人の声を聞いてわかったこと

キャリア

 生まれつきの脳の特性により能力に偏りが生じる「発達障害」。

 幼少期に発覚し両親の判断によって病院を受診することもあれば、子どものころには見過ごされて成人後に発覚するケース、いわゆる“大人の発達障害”もあります。

 仕事上の遅刻やケアレスミスが多い、職場の人間関係やルールに馴染めないなど、発達障害当事者の悩みは尽きません。そんな当事者の実態に女性フリーライターが迫まった『私たちは生きづらさを抱えている 発達障害じゃない人に伝えたい当事者の本音』(イースト・プレス)が刊行されました。

 当事者を目の当たりにして見えてくる実情を知るべく、著者である姫野桂さんにお話を聞きました。

ひと言では言い表せない発達障害の特性

himenokei

フリーライターの姫野桂さん。現在は週刊誌やWebなどで執筆中。専門は性、社会問題、生きづらさ

――以前より精神障害のひとつとして発達障害というものはありましたが、ここにきて“大人の発達障害”が注目されてきたのはなぜでしょうか。

姫野桂(以下、姫野):世間でうつ病が認知されたこともあって心の病を扱う精神科・心療内科が一般化しました。発達障害に起因する悩みや、二次障害の兆候(うつ病や双極性障害)を専門家に相談しやすくなった点があると思います。

 一番大きいのは、NHKが特番で発達障害を何度か取り上げたことです。あとは栗原類さんのような芸能人の方が、発達障害を公表したことも大きく影響しているのではないでしょうか。

 うつ病は病気として認知される前は「ただの怠け者」や「甘え」のように思われがちでした。発達障害に見られる注意力や協調性に難がある特徴も、本人の性格の問題として捉えられていました。近年ようやく、それらは生まれつきの脳の特性によるものだと理解されるようになってきたのかな、と思います。

――姫野さんが発達障害の当事者へ取材しようと思ったきっかけは?

姫野:メディアを通じて発達障害というものがあることを知って「私もそうなんじゃないか」という疑念を抱いたことが大きいです。それから精神科医の岩波明さんの著書をはじめ、発達障害に関する情報を集めるうちに興味が湧いてきました。

 ちょうどその頃に東洋経済オンラインさんから連載のお話をいただいて、私自身が感じていた“生きづらさ”を考え進めるにつれて、「発達障害の当事者を取材する」というテーマに結びつきました。

――発達障害を調べ始めた頃、どのような印象を持ちましたか?

姫野:ひと言で発達障害といっても症状も特性もさまざまで、得意不得意も人によってもバラバラだということを知りました。一般的に発達障害は、ADHD(注意欠陥多動性障害)、ASD(自閉症スペクトラム障害)、LD(学習障害)の3つに分類されます。

 注意欠陥が多く集中力散漫、衝動的な傾向が見られるADHD。コミュケーションが特徴的だったり、興味の対象が限定的な傾向にあるASD。先天的な特性によって基本的な読み書きや計算が困難なLD。たいていの場合はこれらが併存しています。

 ちなみにLDは、知的障害と誤認されがちですが、知的な問題はなく、他の教科はできるのに暗算だけができない、漢字だけが覚えられないといった部分的な特性があります。漢字が覚えられない場合、部首の色分けをした教材を使うなど、工夫すればできる場合もあります。知的障害だと、他のジャンルの教科も同じくらい能力が低いです。

――連載ではどのような特性を持った方に取材したのでしょうか

姫野:取材を通じた印象だと、ASDとADHDの併存が一番多くて、LDは少ない気がします。また、LDは日常生活に特に影響を及ぼしていない場合、気づかないこともあると当事者から聞きました。

 これはTwitterで見て知った話なんですけど、発達障害のことを恋人に伝えたら、以降LINEが全部ひらがなで送られるようになったという。実は特性がバラバラだということはあまり知られていなくて偏見も多いのが現状です。

「生きづらさ」を意識する若者が増えてきている

腕を組んで悩むビジネスマン

※画像はイメージです(以下、同じ)

――著書の中ではそういった状況に苦しむ、さまざまな境遇の当事者を紹介されています。取材相手の方はどのように探したのですか?

姫野:おもにTwitterを利用して取材を受けて下さる方を探しました。最初は当事者が見つかるのか不安でしたが、募集をかけたツイートがすぐに拡散されるなど、当事者探しにはそこまで苦労しませんでした。自分から取材を希望してくる方もいました。

 ただ連載をするにあたり、いろいろな状況の当事者を取材したほうが多くの方に届けられるのではないかと思いました。それで条件を設けて募集をかけました。例えば、当事者同士の夫婦とか、吃音症など認知度の低い障害も併存している方とか。あとは取材した方に他の方を紹介してもらうこともありました。

――取材を受ける当事者の方にはどのような傾向がありましたか?

姫野:若い人が多く、ほぼ20〜30代前半でした。社会人になって間もない若者が仕事の困難に直面して、発達障害を疑って診断を受けるケースが多いからでしょうね。

 でも発達障害が若者にしか見られない傾向かといえば、そうではありません。産業医の方のお話によれば、40代や50代ともなると、ある程度の社会的地位もあり、周囲からも「そういう人」として接されている人が多いです。

 なので、周囲に馴染めず悩んだり、障害を指摘される機会が少なくなります。急な環境の変化がない限りは自覚しないまま生活が送れるということです。

――取材の際、特に注意されたことはありますか?

姫野:発達障害の方はコミュニケーションに特徴があると言われています。取材では心療内科の先生を真似て傾聴の姿勢を心がけました。特にASDの方だと自分の言いたいことだけを述べる傾向、ADHDで衝動性の強い方だと自分の主張をどんどん展開していく方がいるので、こちらの質問と噛み合わないこともあります。

 なので、とにかく聞く側に徹します。その上で、話の中で自然とわいてきた疑問に対して質問を投げるようにしました。「この人は二次障害でうつ病もあるから」とか、妙な気遣いはしなかったですね。