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「大人の発達障害」のリアル。当事者22人の声を聞いてわかったこと

学び

自分の特性をよく理解した上で、働く環境を決める

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――仕事の悩みがきっかけで診断を受ける方が多いとのことですが、当事者が抱える問題としてどのようなものがありますか?

姫野:当事者の多くはまず、幼少期に周囲の人間関係と馴染めないことで苦労してきました。それから就職活動でつまずき、就職しても職場に馴染めず何度も転職を繰り返す方が多いです。

 コミュニケーションの問題以外にも、仕事でケアレスミスが多くて信頼を失い、そのことで極度に落ち込んでしまうこともあります。

――姫野さん自身も検査を受けたそうですが、きっかけは?

姫野:フリーライターとして働いていると、次から次へと仕事を詰め込んでしまい、オーバーワークになりがちです。それでいろいろ無理が重なって、心療内科に行くことにしました。

 医師の方に発達障害当事者を取材していることや、自分自身もASDやLDではないかという疑念を抱いていることを伝えました。それから診断を受けてみるんですけど、詳しい診断結果は著書を読んで知っていただけたらと思います。

――当事者が適正のある職業と出会うにはどうすればよいのでしょうか?

姫野:当事者に限らないかもしれませんが、憧れだけで職業選択をしてしまう人もいます。当事者はそれで失敗するケースが多いです。できないことへの憧れがあるためか、苦手なジャンルの仕事を自分から選んでいるのかもしれません。

 自分の特性を知ることも重要ですが、とある当事者の方の場合だと就活中にいくつか会社訪問するうちに「自分と似た空気感の方がいる職場」という理由で職種を決めたらそれがSE(システムエンジニア)で上手く適応できたといっていました。

 逆に商社やメーカーとか体育会系のノリで団体行動を強いられる環境だと上手くいかない人が多い気がします。

 私自身はフリーランスという働き方を選びましたが、必要以上に人間関係にとらわれる必要がなく、就業時間も定められていない、仕事をこなした分だけ給料がもらえるという、さまざまな面が自分に合っていると実感しています。

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『私たちは生きづらさを抱えている 発達障害じゃない人に伝えたい当事者の本音』(姫野桂・著/イースト・プレス刊)

――当事者が上手く働くために、主にどのような工夫が考えられますか?

姫野:優先順位を示したTo Doリストを作る、作業に没頭して時間を忘れ、別の業務に支障が出てしまう場合、タイマーを使っている当事者もいました。また、空間認知が苦手な方は、自分がいまどこにいるのか分かるスマホの地図アプリもオススメです。

 職場に発達障害を申告しているのであれば、仕事の内容や量に関して自分から相談する必要があります。発達障害を理由に「仕事ができない、やらない」というのではなく、限られた条件で最善を尽くす姿勢を示すことが大切です。

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