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高級食パンの“業界トップ”に挑む「銀座に志かわ」社長が明かす、急成長の理由

ビジネス

業界の常識を覆す「高級食パン」

コンビニ大手のセブンイレブンが出した『金の食パン』や、関西発の『乃が美(のがみ)』などに代表される高級食パンブームは、2013年ごろから始まっていました。その様子をずっと見ていて、513BAKERYでも何かできないかと考えついた商品が『そのまんま食パン』でした。小麦とバターと生クリームにこだわった高級志向の食パンで、いわゆるそのまんま“生”で食べても“トースト”しても美味しいというのをコンセプトにしたんです」

にしかわ

513BAKERYで販売している「そのまんま食パン」

 他方、ベーカリーの慣習として「食パンはスライスして売るもの」というのが常識となっており、スライスされてない「2斤売り」は、ある種“邪道”として考えられていたそうだ。

 それゆえ、高級食パンには異業種ばかりからの参入が目立っていた。ずっとベーカリーを運営してきた髙橋氏は「パン屋がイチから作る高級食パンを出せば面白くなるんじゃないか」と思うようになり、三重ではなく常に流行の最先端を行く銀座の地で勝負しようと画策したのだという。

「人気だった『そのまんま食パン』をブラッシュアップさせ、新たな高級食パンを作ろうと開発に乗り出したんです。すでに先行する他社と差別化を考えたとき、ほとんどが『生』の食パンという打ち出しをしていたので、パンを仕込む際の“水”に着目しました。パン作りに良質でこだわった水を使えば、それこそ新しい食パンの美味しさを見出せるのではと期待を寄せたんです

高級食パンを生み出す「水」とは?

 高級食パンのレシピを考案し、仕込みに使う水を変えればいい。だが、そう簡単に思い通りの味は再現できなかった。というのも、食パン作りの王道とは異なっていたからだ。

「食パンを仕込むのにあたり、教科書には弱酸性の水を使うのが一般的なんです。ただ、日本料理ではよくアルカリイオン水が使われています。それは、食材の出汁をとるのに適しているからで、同様にパン作りの原料となる小麦粉やバター、生クリームなどの食材の旨みを最大限生かすためにアルカリイオン水で仕込もうと考えついた。ただ、イースト菌がうまく発酵せずに膨らまなかったり、味のバランスが崩れたりと何度も試行錯誤を繰り返し、開発におよそ2年あまりを費やしたんですよ。苦節ありながらも、2018年9月に銀座に、1号店を出店したことで、ようやくスタートラインに立てました」

 アルカリイオン水をパンの仕込みに用いることで、こだわり抜いた素材の旨みをより引き立たせることに成功。甘くて柔らかい、ふわふわな食感を実現できたのだ。

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